1999 Fiscal Year Annual Research Report
癌性腹膜炎に対する新たな治療戦略:シクロスポリンA併用療法の可能性
Project/Area Number |
11671253
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片野 光男 九州大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10145203)
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Keywords | 癌性腹膜炎 / シクロスポリンA / インターフェロンーガンマ / FK506 / 胃癌細胞 / アポトーシス / カルシニューリン / カルシウム |
Research Abstract |
本研究は、極めて予後の不良な消化器癌による癌性腹膜炎に対して、免疫抑制剤として日常使用されているシクロスポリンAを応用した新たな治療戦略を開発することが目的であり、平成11年度の計画目標は次の三点から構成された。したがって、この三点についての研究実績の概要を報告する。(1)OK-432とヒト末梢血単核球の混合培養上清中に出現するシクロスポリンA(CsA)との共存において腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するOK-AIF-40kの分離・精製について:種々のカラムおよび抗サイトカイン抗体を組み合わせた精製の結果、OK-AIF-40kはインターフェロンガンマ(IFN-γ)であることが判明した。なお、CsAとIFN-γの組み合わせによる胃癌細胞に対するアポトーシス誘導活性は、OK-432により単核球より誘導される内因性IFN-γの方が遺伝子組み替えIFN-γより遥かに活性が高いことが判明した。(2)OK-AIF-40k(IFN-γ)とCsAの相乗的アポトーシス誘導作用の発現機序の解析:CsAの代わりにFK-506でも同様のアポトーシス誘導が可能であるが、rapamycinにはこの様な効果はないことから、本作用機序の基本ルートに、これまで殆ど報告のされていない、カルシウムーカルモジュリン依存性カルシニューリンの系が関与していることが強く示唆され、現在カルシニューリンの標的となっている分子について検討を進めている。(3)OK-432腹腔内投与による腹水中へのOK-AIF-40kの誘導:我々は癌性腹膜炎の治療法としてOK-432腹腔内投与療法を開発し、過去20年にわたり本治療法の改良を継続してきたが、本療法前後に採取した腹水を用いた検討により、OK-432投与後の腹水中(約70%)にOK-AIF-40k(IFN-γ)が誘導される事が確認された。 以上、11年度の計画についてはほぼ計画通りの結果を得ることができた。したがって、12年度は予定通り、動物の系を用いた治療実験を開始する。
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