2000 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的及び生態工学的アプローチによる大動脈基部瘤化病変の発生機序の解明
Project/Area Number |
11671300
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋元 弘治 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (60302139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 篤志 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90222851)
松本 健郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30209639)
佐藤 正明 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30111371)
遠藤 雅人 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (90282128)
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Keywords | 大動脈瘤 / 狭窄後拡張病変 / エラスターゼ |
Research Abstract |
【目的】 大動脈基部の瘤化病変の発生機転や拡張するメカニズムを生態工学的、分子生物学的の両面から解析するため、大動脈基部に瘤化病変や拡張病変のモデルを作成し、瘤化あるいは拡張病変の程度と病理組織との関連、matrix metalloproteinase(MMP)の局在や分画の変化、およびそれらと病変部の弾性や壁応力の変化(物性)との関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】短期間に成長する幼若な豚(8-10kg)を使用し、超音波クリスタルを上行大動脈に縫着してその拡張程度をモニターした。拡張病変は以下の2群で作成した。大動脈瘤群:豚の上行大動脈に塩化カルシウムを塗布するか、エラスターゼを大動脈壁外膜下に注入し、壁の基質的変化により瘤病変を作成する。狭窄後拡張群:幼若時にその大動脈弁輪部をbandingしその後の成長(体重20kg以上)で相対的な狭窄となり、post stenotic dilatation病変を作成する。 【結果】術後大動脈径の変化を観察する目的で、大動脈壁の外側対面に超音波クリスタルを縫着、leadの先端を上背部に埋め込み術後計測を繰りかえしたが、約1カ月で計測ができなくなった(3頭)。その理由は成長により対面するクリスタルの方向が変化したためあった。解決法を模索し、クリスタルにレンズをつけて真正面に対峙しなくとも計測できるように改良した。瘤病変は塩化カルシウム塗布では作成できず(4頭)、エラスターゼを注入した群(8頭)では3頭が突然死し、全てに軽度の拡張病変(平均1.3倍)と大動脈組織周囲に癒着を高度に観察された。狭窄作成群では、経過観察中に1頭が左心不全(左室肥大)で突然死したが、他は3カ月で軽度の拡張病変(5頭)、中等度の狭窄後拡張病変(3頭)および高度の拡張病変(1頭)(平均2.3倍)を観察した。エラスターゼ群にはマクロファージを含む著しい炎症性細胞浸潤と共に中膜弾性線維の断列を認めたが、狭窄後拡張病変では、拡張率が高いにかかわらず中膜の断列がほとんど認められなかった。壁の弾性変化は、エラスターゼ群では著しく低下(正常壁の0.23倍)したが、拡張群では軽度の低下(正常壁の0.67倍)を示した。 【結論及び問題点】約10kgの幼若豚は生後3ヶ月で体重が倍になり、相対的大動脈の狭窄により上行大動脈に拡張病変を作成することが可能であった。エラスターゼ注入による瘤化病変作成群は大動脈周囲の炎症性変化を来たし、大動脈壁の変化以外に周囲組織の線維化と癒着を来して壁自体の物性の変化を捉えられない可能性があると考えられた。狭窄後拡張病変では、MMPの局在を検討中でそれと拡張病変の程度との関連を検討している。
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