Research Abstract |
平成11年度は揮発性麻酔薬セボフルランが先行虚血に及ぼす影響を検討した。雑種成犬17頭を対象とし気管内挿管後,セボフルラン1MAC(呼気終末濃度)で麻酔維時した。心尖部よりカテ先型圧トランスデューサとコンダクタンスカテーテルを挿入し,左室圧容量曲線を得,左冠動脈前下行枝に冠動脈閉塞用のターニケットを装着した。心表面より12MHzの超音波トランスデューサで乳頭筋レベルの左室短軸像を描出,後方散乱エコーを光磁気ディスク上に記録した。コントロール群(n=8)は左冠動脈前下行枝を20分間閉塞後,120分間再灌流を行い,先行虚血群(n=9)は左前下行枝閉塞前に"5分間閉塞・15分間再灌流"を2サイクル行った。左前下行枝閉塞前,閉塞20分後、再灌流20分,60分,120分後に各測定を行った。心室中隔(虚血領域)と左室下壁(正常領域)に関心領域を設定し,後方散乱エコーの心周期変動を解析,同時に収縮期壁厚増加率を測定した。また左室圧容量曲線から左室収縮終期エラスタンスなどの各指標を測定した。コントロール群,先行虚血群ともに左前下行枝閉塞後、収縮期壁厚増加率は有意に低下したが,閉塞20分後においてコントロール群と比較して先行虚血群の方が有意に壁厚増加率が高かった(コントロール群:35±22,-7±13,15±25,21±29,15±23%,先行虚血群:50±17,13±8,21±13,28±14,28±17%)。虚血領域の後方散乱エコーの心周期性変動はコントロール群において左前下行枝閉塞後,有意な低下がみられたが(7.3±1.6,4.8±2.6,5.0±1.9,4.5±1.4,4.8±1.3dB),先行虚血群では低下傾向を示したが有意な変化ではなかった(7.2±3.8,5.2±1.7,4.8±2.1,5.3±2.5,5.4±2.3dB)。心室・動脈カップリングの指標であるSW/PVAはコントロール群では前下行枝閉塞後有意に悪化したが,先行虚血群では保たれた。セボフルラン麻酔下では先行虚血により心機能および心筋組織性状が保たれた。 この結果を踏まえて次年度はフェンタニール麻酔の先行虚血への影響を検討する予定である。
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