Research Abstract |
平成12年度はフェンタニル麻酔が先行虚血に及ぼす影響を検討した。雑種成犬15頭を対象とし,気管内挿管後フェンタニル0.3μg/kg/min静脈内持続投与にで麻酔維持した。心尖部よりカテ先型圧トランスデューサとコンダクタンスカテーテルを挿入し,左冠動脈前下行枝(LAD)に冠動脈閉塞用のターニケットを装着した。心表面より12MHzの超音波トランスデューサで乳頭筋レベルの左室短軸像を描出,後方散乱エコーを記録した。コントロール群(n=8)はLADを20分間閉塞後,120分間再灌流を行い,先行虚血群(n=7)はLAD閉塞前に"5分間閉塞・15分間再灌流"を2サイクル行った。LAD閉塞前,閉塞20分後,再灌流20分,60分,120分後に各測定を行った。心室中隔(虚血領域)と左室下壁(正常領域)に関心領域を設定し,後方散乱エコーの心周期変動を解析,同時に収縮期壁厚増加率を測定した。また左室圧容量曲線から左室収縮終期エラスタンスなどの各指標を測定した。 コントロール群,先行虚血群ともにLAD閉塞後,収縮期壁厚増加率は有意に低下したが,両群間に有意差はなかった(コントロール群:38±21,-2±13,5±18,14±10,16±13%,先行虚血群:42±16,-7±11,3±11,12±12,13±16%)。虚血領域の後方散乱エコーの周期性変動もコントロール群,先行虚血群ともにLAD閉塞後有意に低下したが,両群間に有意差はなかった(コントロール群:7.3±3.3,4.5±1.3,4.8±1.2,4.6±1.4,4.6±1.5dB;先行虚血群:6.8±1.4,4.4±3.0,3.8±1.2,4.5±1.8,5.2±2.2dB)。心室・動脈カップリングの指標である機械的仕事と総機械的エネルギーの比はコントロール群ではLAD閉塞後有意に悪化したが(0.50±0.10,0.44±0.10,0.43±0.09,0.47±0.09,0.54±0.08),先行虚血群では保たれた。フェンタニル麻酔下では先行虚血により局所心機能および心筋組織性状の保護効果は認められなかったが,左室のエネルギー効率は保たれた。
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