Research Abstract |
この研究はぶどう膜炎における薬剤の感受性と治療効果の関係を明らかにすることを目的として施行された眼内炎の治療に必要な薬剤の感受性について,免疫学的,分子生物学的手法で感受性や背景因子について検索した.得られた結果は,感受性因子を把握することができ,臨床的に今後テーラーメイドのような個々の患者適した合理的治療の実現につながると確信した.具体的にみると,平成11年度は臨床実験として副腎皮質ステロイド薬に対するに薬剤感受性試験をベーチェット病患者,およびVogt-小柳-原田病患者に施行した.その結果,原田病とベーチェット病の患者には一定の割合で,感受性に富むものと,感受性に乏しい者が含まれていることが判明した.その臨床的特徴をレトロスペクテイブに検討した結果は,原著として報告した.1)鈴木,田中他.原田病患者の副腎皮質ステロイド薬に対する感受性.臨床眼科1999年,2)Tanaka,etal.STEROID SENSITIVITY AND POSTOPERATIVE COURSE OF SEVEN BEHCET'S DISEASE PATIENTS.Opthalmic Res.2000年.平成12年度については,我が国のベーチェット病患者は重症例が多い.欧米の患者と較べると病像も異なる.例えば,本邦の患者はステロイド薬が全身投与されると眼症状が最終的に悪化するが,欧米の日系人にはこうした現象はみられない.日本では昭和49年まで毎年繰り返しツ反陽性を示すまで,BCGが法的に接種されたが,米国では施行されていない.従って,BCGはベーチェット病の発症のみならず,病像形成にも関わっていると推察される.若年者に繰り返し接種されるBCGと仮定して本研究を立案した.実験は,新生児ラット生後,3日目より思春期にかけて,週1回の割合でBCGを接種する.これをツベルクリン反応(フットパッド)が陽性を示すまで繰り返す.成長後にBCG接種群と非接種群に分け,BCG接種の影響をin vitroで検討した.接種群におけるBCG非感受性ラット(BCGをくり返してもツ陽性を示さないラット)のリンパ球をmitogen刺激し,ステロイド薬を添加するとよりいっそうIL2の発現量が増えた(RT-PCR)こうしたBCGとグルココルチコイドに対する感受性について,まとめOcular Immunology & Inflammation誌に投稿し,2001年1月受理された.さらに炎症の生じている虹彩組織中のグルココルチコイド受容体発現量をTaqman probeを用いたRT-PCRで定量し,ステロイド薬治療と臨床経過,組織中の受容体発現量の関係について,検討した.結果は第105回日本眼科学会総会で発表する(田中,2001年4月19日),また,2001年6月29日には第35回眼炎症学会シンポジウムにて薬剤感受性と内眼炎について講演(田中)する.
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