口腔扁平上皮癌における血管新生と細胞接着分子との関連

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11671991
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 桃田 幸弘 徳島大学, 歯学部・附属病院, 助手 (00304543)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 里村 一人 徳島大学, 歯学部, 助手 (80243715) ; 林 英司 徳島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (50173000) ; 鎌田 伸之 徳島大学, 歯学部, 助教授 (70242211) ; 武知 正晃 徳島大学, 歯学部, 助手 (00304535)
• Keywords: 口腔扁平上皮癌細胞 / 細胞接着分子 / E-カドヘリン / 血管新生 / 血管新生阻害剤

Research Abstract

1.口腔癌の大部分は扁平上皮癌であり、浸潤・転移はその予後を大きく左右する。癌細胞の浸潤には細胞間接着の減弱・細胞外基質の分解という過程が必須であり、細胞間接着分子の一つであるE-cadherinの発現の低下が各種癌で報告されている。最近Cano,Batlleらは、E-cadherinのrepressorとして上皮-間葉系移行に関与する転写因子Snailを報告した。しかしSnailと癌の生物学的悪性度との相関に関する報告は少ない。そこで、数種類の扁平上皮癌を用いてE-cadherinとSnailの発現の相関と、さらに、高度浸潤能獲得過程におけるSnailの作用について検討した。口腔扁平上皮癌細胞はSnail発現の上昇によりE-cadherinの発現が低下し、さらにMMP-2の発現を上昇させることによって高度浸潤能を獲得することが明らかとなった。また、Snailの発現が低い癌細胞でも周囲間葉組織との相互作用により一過性にSnailが発現し、浸潤・転移する可能性が示唆された。以上より、癌組織におけるSnailの発現の検討は、浸潤・転移の予測に有用であり、予後の推測や治療方針の決定に有用であると考えられた。
2.血管新生は固形癌の浸潤・転移および増殖を規定する主要な因子の一つである。近年、血管内皮細胞の増殖抑制など血管新生を阻害することにより癌の増殖・転移を制御することが可能であるという概念のもと、種々の血管新生阻害剤が見い出され、固形癌の新規化学療法剤として期待されている。そこで、口腔扁平上皮癌の増殖に対する血管新生阻害剤の影響および有用性をフマギリン誘導体であるTNP-470を用いて検討するとともに、その血管内皮細胞に対する選択的な増殖抑制機構の解析を行った。その結果、口腔扁平上皮癌細胞は血管新生を促進していることが明らかとなった。また、血管新生阻害剤TNP-470は口腔扁平上皮癌の増殖抑制効果を示し、その新規化学療法剤としての有用性が示唆された。さらに、血管内皮細胞のTNP-470に対する選択的な高い感受性は細胞受容体数の差によるものでないことが明らかとなり、受容体結合以後の標的分子の差によるものと考えられた。

Research Products

• [Publications] 上田直弘: "血管新生阻害剤による口腔扁平上皮癌の増殖抑制とその機構解析"四国歯誌. 13. 175-197 (2000)
• [Publications] Yokoyama K: "Revearse correlation of E-cadherin and snail expression in oral squamous cell carcinoma cells in vitro."Eur J Cancer, Oral Oncol. 37. 65-71 (2001)
• [Publications] Fujimoto R: "Expression of telomerase components in oral keratinocytes and squamous cell carcinomas."Eur J Cancer, Oral Oncol.. 37. 132-140 (2001)