1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11680030
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
菊 幸一 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (50195195)
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Keywords | 生涯スポーツ / 多様化 / 公共性 / スポーツクラブ |
Research Abstract |
外国文献による生涯スポーツの現状と多様化の実態から、英・独を中心とするスポーツの公共性概念に対して先進的な知見をこれまで提示してきた国々でさえ、組織的なクラブ・スポーツの実態や人びとのライフスタイルの多様化から、その公共性に関する新たな戦略的概念の構築が求められていることが明らかにされた。具体的には、わが国が今後モデル化しようとしている「総合型地域スポーツクラブ」においても、若者を中心としたクラブ離れとスポーツ・ライフスタイルの多様化が生じており、既成の公共性概念ではそのような動向を「公共」的活動として担保し得ない状況が生まれてきているということのなのだ。この点では、ヨーロッパの体育・スポーツ関連の研究・教育体制も同様な危機的状況に直面しており、その種の研究報告が数多くなされていることが明らかになった。このような現象は、もちろん早晩わが国の体育・スポーツの公共的基盤にも影響与えるものであり、このような動向の詳細な分析と要因の考察が今後さらに必要なことが明らかにされた。 また、そもそもヨーロッパにおいて、このようなスポーツの公共性に対する根本的な課題がつきつけられた歴史社会的背景には、近代社会が形成してきた市民的公共圏における「上」からの受容的公共圏形成の限界が考えられる。この点については、わが国の今後の生涯スポーツの公共性の行方を大きく左右するであろう「総合型地域スポーツクラブ」モデルを、このようなハーバーマスの「公共圏」概念をlつの分析枠組みとしてさらに検証していく可能性が示唆された。このような観点から本年度の研究成果として、近藤英男ほか編「新世紀スポーツ文化論』の章分担である「地域スポーツクラブ論-「公共性」の脱構築に向けて-」を執筆し、来年度に刊行の予定である。
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