2000 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体^<13>C標識の糖質摂取が運動時の循環調節に及ぼす影響
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11680031
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
定本 朋子 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (30201528)
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Keywords | 動脈血圧 / 心拍数 / 長時間運動 / 筋血流 |
Research Abstract |
安定同位体^<13>Cを標識したグルコースやフルクトースを経口摂取すると,生体内で利用され,呼気ガス中に^<13>CO_2となって排出される.通常の炭素(^<12>C)は,^<12>CO_2として排出されることから,呼気ガス中の^<13>CO_2と^<12>CO_2の同位体比を連続計測すれば,摂取した基質の体内利用動態がわかる.前年度に確立した呼気ガス同位体比の連続計測法を用いて,本年度では,「グルコースの経口摂取が運動時の循環調節に及ぼす影響」について検討した.健康な成人10名が,60%VO_<2max>負荷で40分間の自転車作業(1回目)をした後,3.5分間の休息の後,2回目の運動として60%VO_<2max>負荷で60分間の自転車作業を行った.この休息時間に,各被験者は,安定同位体^<13>Cを標識した5%グルコースを含む溶液(G条件),あるいは水溶液(W条件)を摂取するようにした.2回目の運動時における両条件間の同位体比の比較から,摂取グルコースの酸化利用開始点が15分後であることが示された.またGとW条件間における動脈血圧を比較した結果,G条件の血圧が,運動開始後5分後という早期から低下し,その後2回目の運動終了まで一貫して低い値をとることが示された.このような早期からの血圧低下は,グルコース酸化利用開始に先行しているため,経口摂取した糖溶液の消化吸収に起因する消化器官の血流増大がその重要な要因であると推察された.一方,グルコース酸化開始後から運動後半にかけて続くG条件における血圧低下には,心拍数と脚筋血流の低下を伴うことを考え合せると,糖質利用の亢進が,一定の運動に必要なエネルギー供給を効率化させ,脚筋の動員量が低下し,その結果,中枢指令の低下あるいは骨格筋反射性制御の低下をもたらせ,ひいては動脈血圧および心拍数の低下をもたらすことになったと推察された.
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