2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11680164
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
堀内 晶子 国際基督教大学, 教養学部, 講師 (60052289)
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Keywords | 土器 / 脂質 / 化学分析 / グリセリド / 脂肪酸 |
Research Abstract |
ツバキ油を土器モデルに吸着させ、異なった環境に一定期間保存した試料を回収し、前年度確立した方法を用いてツバキ油に含まれているトリグリセリド(TG)、モノ・ジグリセリド(MDG)、及び脂肪酸(FA)を個別に回収し、回収率及び組成変化を分析した。今年度は、土器モデル表面近くに吸着した脂質を一度抽出した後抽出しきれなかった、より深部に吸着された脂質の残留性と組成変化を検討した。さらに、これまでに用いた空気中、空気を遮断した封管中、土壌中、の3種類の環境に加え、新たに水中に試料を保存し、水中での脂質の変化も検討した。 土器モデルから一度脂質を取り除いた後、土器モデルを粉砕し、再度抽出すると、吸着させた初期には存在しなかった深部の脂質が、時を経るに従って増加する事がわかった。表面近くに吸着した脂質の回収率は、時を経るに従って減少することから、脂質が徐々に深部に移行していると考えられる。しかし、表面近くと深部の脂質の和は、始めに吸着させた脂質の量には届かず、流出、分解などにより、時と共に土器内の脂質の絶対量が減少している。 回収率は、TGが時間と共に減少し、少量しか存在しなかったMDGが、時間と共に増加する。しかし、ある時期を過ぎるとMDGも減少した。また初期には少量しか存在しなかった脂肪酸が時間と共に増加し、グリセリドから、脂肪酸が徐々に解離していることを示している。しかし200日以降になると全ての回収率は極端に減少した。組成は、予測通り、TG>MDG>FAの順に安定であった。特に深部に残留したTGは、空気中の試料を除いて、実験誤差範囲内で200日位までは比較的安定であることがわかった。しかし200日以降は回収率低下の為、本方法では、信頼性のあるデータを得る事ができなかった。特に水中ではTGが良く保存されていた。 以上の結果は、条件によって脂質の組成が安定に残存する可能性を示唆している。
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