2001 Fiscal Year Annual Research Report
気候温暖化による中部日本・高山域の少雪化と森林生態系の動態変化の解析
Project/Area Number |
11680535
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
丸田 恵美子 東邦大学, 理学部, 助教授 (90229609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶 幹男 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00152645)
及川 武久 筑波大学, 生物科学系, 教授 (70011682)
上村 保麿 東邦大学, 理学部, 助教授 (20120256)
末田 達彦 愛媛大学, 農学部, 教授 (90109314)
池田 武文 京都府立大学, 農学部, 助教授 (50183158)
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Keywords | 気候温暖化 / 森林限界 / 亜高山帯 / 水ストレス / キャビテーション / エンボリズム / 気孔コンダクタンス / Abies mariesii |
Research Abstract |
中部山岳・乗鞍岳の森林限界の積雪面より上で越冬したシュートが4月初めに水分量の最低値をとった際に、枯死に至ることはないものの、木部負圧が低下し、かなりの程度のキャビテーション(木部内に気泡が生じて水の通導を妨げる)が生じた。このような致死には至らない冬から春先にかけての水分ストレスは、その後どのような経過をたどるのかについて重点的に調査を行った。雪融けが進んだ6月上旬には、すでに針葉の含水量は回復し始めている。この時、冬季に積雪面上にあった枝では通水の阻害率は依然として60%近かったが、積雪面下にあった枝では通水阻害はほとんどみられなかった。当年の木部が形成され始めた7月下旬には、積雪面上にあった枝のPLCは約40%にまで回復したが、夜明けの日最大(predawn)木部圧ポテンシャルは低く、夜間にも針葉の水分欠差が回復しないことを示している。そして気孔コンダクタンスは日中を通じて低く蒸散量も小さかった。これに対して、積雪面下の枝では、predawnの木部圧ポテンシャルは高く、気孔コンダクタンスも通常の常緑針葉樹と同じレベルを示し、特にストレスを受けていないことを示している。このような顕著な違いは、冬季に積雪面上のシュートが受けたキャビテーションのために通水が阻害され、気孔コンダクタンスが低下したためであると考えられる。当年の木部の形成がほぼ終了した9月初めには積雪面上の枝のPLCは約10%にまで減少し、水ポテンシャルや気孔コンダクタンスの日変化も積雪面下と同様の正常の状態となった。以上のことから、冬季に積雪面上の枝が受けた水分ストレスは、新しい木部の形成が完了するまで、気孔コンダクタンスを低下させるという形で残存し、年間の光合成量を減少させているということができる。
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