2000 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア社会変容過程のダイナミクス:民族間関係・移動・文化再編
Project/Area Number |
11691077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 剛 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (60127066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 登 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (50273503)
林 行夫 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (60208634)
長津 一史 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手 (20324676)
貞好 康志 神戸大学, 国際文化学部, 講師 (20314453)
三野 洋子 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (60283660)
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Keywords | 東南アジア / 社会変容 / 民族間関係 / 移動 / 文化再編 |
Research Abstract |
今年度は、日本人7人、マレーシア人1人、タイ人1人が調査をおこなった。長津一史がマレー海域の調査のため、タウィーシンがメコン河流域の調査のため今年度から参加した。研究組織のメンバーは、交付申請書に記した目的と計画にしたがって、フィールド調査と公文書館等における文献調査に従事した。加藤はインドネシア・西スマトラ、長津はマレーシア・サバ州、林は東北タイおよび北ラオス、石川はマレーシア・サラワク州、三野は北タイおよび下ビルマ、貞好はインドネシア・スマラン市、小瀬木はフィリピン・カリボ地方、ユスフはマレーシア・コタバル市、タウィーシンは東北タイにおいて、それぞれ調査をおこなった。また、加藤はアメリカ・コーネル大学において文献資料を収集した。 今年度の成果は、各メンバーが調査地における社会変容と、国民国家や国家間関係のようなより大きな政治的枠組みにおける変化との相関を、歴史的に把握できたことである。たとえば、加藤はポスト・スハルト期のインドネシアにおける地方分権化の流れのなかで、行政区や民族を単位とする伝統文化が再編・復興している状況を西スマトラにおいて確認し、それをスハルト期に進められた民族・地方文化の公定化プロセスと対比して把握した。長津は、サバ州がマレーシアの一州として独立した後、同州のイスラーム系民族のアイデンティティがマレーという政治的な民族概念を軸として再構築されてきたことを確認した。また林と三野は、ラオスとビルマで進められている市場経済導入政策が、両国とタイとの間の人口移動を促し、ラオ人やカレン人の宗教再編を引き起こしていることを確認した。参加メンバーは、調査地の社会変容を大きな政治的枠組みとの相関において把握することの重要性を再確認し、来年度はその相関をより体系的に理解すべきとの認識で一致するようになった。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 加藤剛: "「スマトラの村の20世紀-地域の歴史を描く」"アジア・アフリカ地域研究. 1(近刊). (2001)
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[Publications] Nagatsu,Kazufumi: ""Pirates Pirates, Sea Nomads or Protectors of Islam? : A Note on "Bajau" Identifications in the Malaysian Context.""アジア・アフリカ地域研究. 1(近刊). (2001)
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[Publications] 長津一史: "「海に暮らす-スルー海域サマ人の杭上家屋」"コミュニティ. 127(近刊). (2001)
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[Publications] 林行夫: "「国境線上の仏塔-チェンマイ・ウィエンヘーン群から」"京都大学東南アジア研究センター・ニュースレター. 43. 14 (2000)
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[Publications] Mino(Hayami),Yoko: ""Challenges to Community Rights in the Hill Forests : State Policy and Local Contradictions : A Karen Case.""Tai Culture : International Review on Tai Cultural Studies. 5(2). 104-131 (2000)
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[Publications] 三野(速水)洋子: "「差異の交差するところ:北タイ山地における民族間結婚」"地域研究論集. 3(2). 21-35 (2000)
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[Publications] 長津一史: "「海と国境-移動を生きるサマ人の世界」(『海のアジア3 島と人のダイナミズム』所収)"岩波書店(尾本恵市,濱下武志,村井吉敬,家島彦一 編). 173-202 (2001)
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[Publications] 林行夫: "『ラオ人社会の宗教と文化変容-東北タイの地域・宗教社会誌』"京都大学学術出版会. 476 (2000)
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[Publications] 林行夫: "「現代タイ国における仏教の諸相-制度と実践の狭間で」(『現代世界と宗教』所収)"国際書院(総合研究開発機構NIRA,中牧弘允 編). 71-87 (2000)
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[Publications] Ishikawa,Noboru: ""The Sarawak Malay Studies : a New Agenda and Lessons from the Past."(In Nusantara Studies Workshop on the State of the Art)."Institute of East Asian Studies,Universiti Malaysia Sarawak(近刊). (2001)
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[Publications] 石川登: "「文化と経済のボーダーランドーボルネオ南西部国境地帯の調査から」(『文化としての経済』所収)"山川出版社(川田順造 編)(近刊). (2001)
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[Publications] Mino(Hayami),Yoko: ""The Karen of Burma and Thailand."(In Endangered Peoples Series : Southeast Asia)."Greenwood Publishing Co.(Leslie Sponsel(ed.)). 137-156 (2000)
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[Publications] 貞好康志: "「『民族性』と『在地性』-ジャワの鄭和祭にみる交錯」(『近所づきあいの風景一つながりを再考する』所収)"昭和堂(福井勝義 編). 90-116 (2000)