2001 Fiscal Year Annual Research Report
アジア地域における陶磁器の流通に関する自然科学的研究
Project/Area Number |
11694019
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Research Institution | Nara National Cultural Properties Research Institute |
Principal Investigator |
沢田 正昭 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20000490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 淳一郎 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (10110090)
西村 康 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (80000488)
町田 章 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 所長 (90000471)
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30107718)
村上 隆 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (00192774)
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Keywords | 陶磁器 / 釉薬 / 流通 / カンボジア / 瀬戸・美濃 / 中性子放射化分析 / 蛍光X線分析 / EPMA分析 |
Research Abstract |
本研究は、陶磁器の流通に関する問題点を検討することを基本的なテーマに据え、考古学的な発掘調査に伴って出土した陶磁器遺物に対する科学的な調査研究法とその検証法を確立することを目的とする。なお、米国スミソニアン研究機構と、奈良文化財研究所をはじめとする文化庁関係機関との間で1990年から実施している日米国際共同研究の一環として行なった。陶磁器研究は肉眼観察が基本であるが、さまざまな自然科学的手法を駆使して得られた新しい知見が、産地や年代、さらには製作技法に関する理解を深める可能性を秘めている。産地推定の手法を検証するために、肥前産の磁器資料の中で、17世紀中葉の限られた時期にわが国から東南アジア向けに輸出することを目的として生産された「日ノ字鳳凰紋」、「荒磯紋」を持つ皿や鉢類の磁器片資料に着目した。生産地から出土した資料と消費地から出土した資料に対して行なった熱中性子放射化分析と蛍光X線分析の分析データを再検証し、このタイプの磁器資料に対してはさらに厳密な解析結果を提供し得る可能性を示唆できた。また、瀬戸美濃産の陶磁器資料に対する釉の研究では、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)による釉薬層の微細構造の解析を行い、不均一な元素分布状態に対する新しい知見を得た。一例を挙げると、元屋敷連房式登窯跡出土の黒美濃系の釉薬層では、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)などの元素の分布に微小な不均一性が認められた。これらの現象は、焼成時の温度や時間、さらには窯からの引き出し後の冷却速度などで微妙に影響を受けたものと考えられる。また、スミソニアン研究機構フリーア美術館所蔵の漢代緑釉陶器に対して新たな調査を行い、今後の研究に資することができた。さらに、カンボジアにおける窯跡群の探査を実施し、窯構造の調査を行なうとともに、出土陶器片に対して熱ルミネッセンス法による年代測定も試みたことも新しい取り組みである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 二宮 修治 他: "肥前産陶磁器の流通に関する分析科学的調査(1)-国内外に出土する見込み荒磯文、日字鳳凰文磁器の生産地推定"日本文化財科学会第18回大会研究発表要旨集. 162-163 (2001)
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[Publications] 村上 隆 他: "Spring-8を用いた高エネルギー放射光蛍光X線分析による陶磁器分析の基礎的研究"日本文化財科学会第18回大会研究発表要旨集. 164-165 (2001)
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[Publications] 巽 淳一郎: "「奈良三彩関係文献目録」、『埋蔵文化財ニュース』106号"奈良文化財研究所. 36 (2002)