Research Abstract |
昨年度までに作製した液柱内対流観察装置を用いて,液柱内の対流が層流から振動流へと遷移してゆく際の,遷移過程及び各状態における対流構造を,温度の振動状態と関連付けて詳細に観察した.また,液柱内の局所的熱流束と操作条件の関係を微小重力実験と数値解析を用いて明らかにした.なお,微小重力実験は,液柱実験装置を落下カプセル内に設置し,ドイツ・ブレーメン大学の落下塔(微小重力時間:4.5sec)を用いて行った. これにより,液柱内の温度振動状態が,定常(S),周期的伸縮振動(P_S),周期的回転振動(P_T),準周期的振動(QP),そしてカオス振動(C)のいずれかに分類できることがわかった.P_S,P_T及びQPでは,流れのよどみ領域が水平断面上に多角形を形成し,その角数は温度振動状態のモード数と一致した.この観察結果より,温度振動状態を表すモデル式を提出した.モデル式は実験結果とよく一致した. また,このモデル式より,各状態の特徴が明確となった.まず,P_Sでは,すべての周方向において,振幅が異なるコヒーレントな温度振動が観察され,一方,P_Tでは,振幅が等しく,周期が円周位置に依存してずれた温度振動が観察された.そしてQPは,これら2種類の混合状態であることがわかった.上下ディスク間の温度差を上げるに従い,温度振動状態はS→P_S→QP→P_Tと遷移することがわかった.これらの遷移プロセスは液柱の体積や重力などに依存した. また,昨年度までに測定した,液柱内の局所的熱流束に関する結果と数値解析結果を比較し,操作条件が液柱内の熱流東に及ぼす影響を無次元数を用いて統一的に整理した.これにより,融液内対流状態が熱移動現象に及ぼす影響を明らかにした. 以上の成果は,液柱内の温度振動状態の微細機構を明らかにしたものであり,融液成長法による結晶成長時の操作条件決定などに有益なものである. なお,本年度は,微小重力実験及び研究討論等のため,研究者3人が日独間を3回,日米間を2回往復した.また,実験に必要な試料などの消耗品を購入した.
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