1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトTCR/HLA/ペプチド複合体の相互作用ならびに自己免疫疾患の病因解析
Project/Area Number |
11694294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 泰治 熊本大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10156119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 厚 熊本大学, 大学院・医学研究科, 助手 (30250343)
千住 覚 熊本大学, 大学院・医学研究科, 助手 (50274709)
吉良 潤一 九州大学, 医学部, 教授 (40183305)
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Keywords | 多発性硬化症 / ミエリン蛋白 / HLAクラスII分子 / 自己反応性CD4^+T細胞 / 自己抗原ペプチド / エピトープライブラリー |
Research Abstract |
日本人の多発性硬化症(MS)には、臨床像および免疫遺伝学的背景の異なるアジア型と西洋型の2型が存在する。この2病型間で、ミエリン蛋白に対する自己反応性T細胞の特異性、免疫応答の特徴を比較検討することを目的として、アジア型と西洋型MS患者、更に健常人の末梢血リンパ球よりミエリン蛋白自己反応性CD4^+T細胞株の樹立を行った。刺激抗原として、ミエリン蛋白であるMBP,PLP,MOGの全長をカバーするオーバーラッピッングペプチドを合成し、またMBPとMOGの遺伝子組換え蛋白を作成した。 ミエリン蛋白反応性T細胞株は、アジア型で10名中5名、、西洋型で11名中6名、健常人では13名中7名から樹立された。T細胞株を樹立し得た症例について解析したところ、西洋型の症例では、3種類の蛋白にほぼ同等に反応性を示す症例が多く認められた。一方、アジア型の場合、MBPとPLPの各々に対して5名中2名に反応性を認めたのに対し、MOGに対しては5例全てに反応性を認めた。健常人ではMBP,MOGでは7名中3名、PLPには7名中2名に反応性が認められた。 このように、西洋型では3種類のミエリン蛋白に偏り無く反応性を示すのに対し、アジア型ではMOGへの反応が優位であるという違いが認められた。しかしながら、アジア型MSに感受性を示すDP5拘束性のMOG反応性T細胞は樹立されておらず、また西洋型症例でもMOGに対し高い反応性を示しており、現時点では、MOGに対する免疫応答がアジア型MSに特異的な病像形成に関与しているとの結論は出せない。 最近、我々は、HLAクラスII分子とランダムなペプチドの複合体を抗原提示細胞上に発現させたエピトープライブラリーを用いたCD4^+T細胞のリガンドを同定するシステムを開発した。今後、このシステムを用いて、アジア型MS患者よりDP5分子に拘束される抗原蛋白の同定を行うことを計画している。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Yun,C.: "Augmentation of immune response by altered peptide ligands of the antigenic peptide in human CD4^+T cell clone reacting to TEL/AML1 fusion protein."Tissue Antigens. 54. 153-161 (1999)
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[Publications] Yamasaki,K.: "HLA-DPB1^*0501-associated optico-spinal multiple sclerosis: clinical, neuroimaging and immunogenetic studies."Brain. 122. 1689-1696 (1999)
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[Publications] Tanaka,Y.: "Identification of peptide superagonists for a self-K-ras-reactive CD4^+T cell clone, using combinatorial peptide libraries and mass spectrometry."J. Immunol.. 162. 7155-7161 (1999)
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[Publications] Ito,H.: "Analysis of T-cell responses to the β2-glycoprotein I-derived peptide libraly in patients with anti-β2-glycoprotein I antibody-associated autoimmunity."Human Immunol.. (in press).
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[Publications] Fukazawa,T.: "Both the HLA-DPB1 and -DRB1 alleles correlate with risk for multiple sclerosis in Japanese: Clinical phenotypes and gender as important factors."Tissue Antigens. (in press).
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[Publications] 尹 忠秀: "アナログ抗原ペプチドを用いた抗腫瘍免疫の増強"臨床免疫. 32(2). 190-197 (1999)
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[Publications] 西村 泰治: "HLA分子と結合ペプチドの構造"Diabetes Frontier. 10(2). 267-275 (1999)
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[Publications] 三野原 元澄: "多発性硬化症"臨床検査. 43(13). 1647-1655 (1999)
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[Publications] 西村 泰治: "T細胞抗原受容体におけるリガンドと伝達シグナルの多様性:抗原の質的変化が応答に及ぼす影響"細胞工学・特集「免疫システムを支える抗原情報伝達の多様な分子構造」. 19(2). 228-238 (2000)
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[Publications] 西村 泰治: "CLIP置換インバリアント鎖遺伝子を利用したHLAクラスII・ペプチド複合体発現細胞ライブラリー;腫瘍抗原同定への応用"分子細胞治療 特集「がん免疫療法の最前線」. 1(1). 14-21 (2000)
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[Publications] 西村 泰治: "T細胞に抗原を認識させる主要組織適合抗原の構造と機能"蛋白質・核酸・酵素. (in press).
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[Publications] 西村 泰治: "医科遺伝学「免疫遺伝学」"南江堂(東京). 32(110-141) (1999)
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[Publications] 西村 泰治: "医科遺伝学「免疫病の遺伝学」"南江堂(東京). 16(251-266) (1999)
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[Publications] 西村 泰治: "分子予防医学「MHCとペプチド」"医学書院(東京). 12(324-335) (1999)
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[Publications] 尹 忠秀: "Annual Review免疫2000「抗原ペプチドのアナログによる抗腫瘍免疫の増強」"科学評論社(東京). 9(280-288) (1999)
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[Publications] 西村 泰治: "11巻現代医学の基礎「感染と生体防御」14「ワクチン開発の新戦略」"岩波書店(東京). 23(221-243) (2000)