1999 Fiscal Year Annual Research Report
都市のエスニック・マイノリティによる法使用と法批判の研究
Project/Area Number |
11720001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾崎 一郎 北海道大学, 法学部, 助教授 (00233510)
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Keywords | エスニックマイノリティ / 差別 / 法使用 / 法批判 / 権力 / 外国人 / 私人間関係 / 言語 |
Research Abstract |
当初は、都市のエスニック・マイノリティをめぐる諸問題(外国人労働者差別問題、不法滞在者の子供の教育、住居問題など)に関わる2次文献を集め分析していたのであるが、その過程で、これらの問題を本質的に理解し処方箋を書くためには、法という道具が有するアンビヴァレンス、即ち、権力を制約すると同時に再生産するという性格に関する、根源的な理解が必要であることに思い至った。 そこで、当初の研究目的からすると迂遠な道であることは自覚しつつ、エスニック・マイノリティをめぐる直接的な資料・文献から、法と権力の関係に広く関わる研究文献の収集、分析に重点を移した。そこでは、特にフェミニズムやカルチュラル・スタディーズといった関連問題領域にも目配りし、なるべくエスニック・マイノリティ問題を超えた普遍性において法の持つ権力性および権力制約性を理解することに努めた。 現時点までに得られた知見としては、差別や支配といった権力的関係が<私人間において>成立していることが法の発動の様態や効果に深く関わっており従って私人間関係というものが法にとって持つ社会学的意味を再点検する必要があること、その場合法が持つ効果の把握には単純に法の実体的内容に着目し提言する(例えば外国人の権利の拡張など)だけでなく、法的言語を用い相手に働きかけることの言語行為論的な解明が重要な手がかりになることが、特に挙げられる。 以上をふまえ現在は、私人がもう一方の私人にルール言及的にコミュニケーションすることの構造と意味の解明に取り組みつつ、来年度行う予定の実態調査のための基礎枠組みを作っている。
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