1999 Fiscal Year Annual Research Report
伊豆諸島三宅島における森林生態系の遷移に関する研究
Project/Area Number |
11740423
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上條 隆志 筑波大学, 農林学系, 講師 (10301079)
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Keywords | 遷移 / 火山島 / 植生 / 土壌 / 栄養塩類 / 生態系 / 窒素固定 / 暖温帯 |
Research Abstract |
火山島である三宅島において森林生態系の機能を含めた遷移を明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。 1.三宅島の1962年溶岩(遷移初期)、1874年溶岩(遷移中期)および噴火の影響を受けていない地域の森林(極相)に計6箇所の固定調査区を設置し、毎木調査を行った。その結果、オオバヤシャブシ低木林、タブノキ-オオシマザクラ林、スダジイ林へと遷移すること、推定地上部現存量は遷移初期で0.3-2kg/m^2、中期で12-20kg/m^2、極相で29-54kg/m^2に増加することが明らかになった。 2.各調査区で土壌断面調査と内径37mmの円筒管による規則サンプリングを行った。採取した湿土壌に関して、水分含量、pH、NH_4、NO_3、可吸性P、Ca、Mg、全N。有機態Cの定量を行った。単位面積当りの土壌総量は、遷移初期では約0.3kg乾土/m^2であったが、極相では52〜76kg乾土/m^2と著しく増加した。有機態C濃度は遷移初期と中期で高かった(24%〜38%)。N濃度は遷移初期と中期で高く(総濃度で1.4%〜2.3%、無機態濃度で57ppm〜210ppm)、むしろ極相で低くなった(総濃度で約0.5%、無機態濃度で約19ppm)。総量換算すると、N総量は遷移初期で少なく、極相で多くなった。他の栄養塩類に関してもNと同様の傾向がみられ、遷移初期の有機質、少量、高栄養塩濃度の土壌から、極相の低栄養塩類で総量の多い土壌へと変化することが明らかになった。遷移初期でN濃度が高いのは、N固定をするオオバヤシャブシのリターの供給によると考えられた。また、遷移初期において栄養塩類が高濃度に存在することが地上部の速い発達と関係していると考えられた。 3.上記の他、自動気象観測器の設置と各固定調査区にリタートラップの設置を行い、気象条件とリター量の季節変化のデータ収集を開始した。
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