Research Abstract |
骨組織に力学的負荷を作用させると,分極によって電荷が誘起される圧電現象を示すことが知られており,この現象が骨の形成・吸収に大きな影響を及ぼしているといわれている.しかしながら,骨に作用する力学的負荷と,それによって生じる圧電位との定量的な関係は調べられていない.そこで本研究では,力学的負荷が骨の圧電特性に及ぼす影響について定量的に検討した.成熟日本白色家兎の大腿骨に2本の電極を導電性接着剤を用いて固定した後,種々の条件の力学的負荷を骨に作用させ,発生する圧電位を測定した.まず,6N,40N,120Nの静的荷重を作用させると,それぞれ約4mV,10mV,10mVの圧電位が生じ,この結果より,低荷重領域では負荷の増大に伴い圧電位も増加するが,高荷重領域では負荷を増加させても圧電位に変化が生じないことが明らかになった.また,周波数4Hzの繰り返し負荷を,18N,44Nの2種類のピーク荷重で骨に作用させる実験を行い,その結果,繰り返し数1×10^2までならばピーク荷重時に生じる圧電位は常にほぼ一定であることが分かった.さらに,ピーク荷重34Nで,繰り返し周波数を0.1Hz,1Hz,5Hzの3種類に変化させて,圧電位の計測を行ったところ,繰り返し周波数の相違による圧電位の違いはみられなかったが,周波数の大きな繰り返し負荷を作用させた場合に,ピーク荷重が作用する前に圧電位がピークに達するという極めて興味深い現象が確認された.以上のような本研究の結果より,骨に生じる圧電位が最も有効に発生する負荷条件が存在する可能性が示唆された.今後は,より詳細な負荷条件を設定した実験を行うことで,負荷条件と圧電位の定量的な関係を完全に明らかにし,これにより骨の機能維持に最適な負荷条件を探求するための新しい知見が得られるものと推察される.
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