Research Abstract |
血管反応性に対し、活性酸素種の種特異的作用様式が存在するか否か詳細に解析することを標記研究課題の最終目標とする。特に本年度では,神経伝達物質noradrenarine(NA)の遊離態度を検討することにより,活性酸素ラジカル種の作用を弁別整理するための基礎実験に着手した。したがって,シナプス前作用(NA遊離機構)とシナプス後作用(α受容体に関する作用)に対して,一重項酸素(^1O_2)がどのような特異的修飾作用を示すか解析することを目的の基本とした。 ニュージーランド白色家兎(♂2.0〜2.5kg)から摘出した血管の螺旋状標本を作成した。懸垂した螺旋状標本に,,95%O_2,5%CO_2ガスにより通気したKrebs-Ringer溶液を表面灌流し,100分間の安定期間の後にNAサンプリングを開始し,10分間の静止期間,10分および15分間の^1O_2曝露処置あるいは非処置,10分間の電気刺激(ES),10分間の回復期間とする時間設定で,計40分または45分間連続して行った。また,^1O_2の消去剤であるL-histidine(10,25,50mM)を^1O_2曝露3分前からESを開始するまでの計13分間表面灌流によって処置した。張力変化は,張力トランスデューサーを介して,またESに応答する内因性NA放出量は,高速液体クロマトグラフィー(HPLCを用いて定量した。^1O_2を発生させるため,光増感試薬ローズベンガル(RB)に波長550nm,照度18,000luxの緑色光を照射した。^1O_2の発生量は電子磁気共鳴(ESR)法を用い,2,2,6,6-tetramethylpiperidine(TEMP)が^1O_2と反応して生成する2,2,6,6-tetramethylpiperidine-N-oxyl(TEMPO)のシグナルを指標として定性した。 RB(50μM)あるいは光照射(10分,15分)単独では,標本の張力には何の影響も与えなかったが,RB存在下で光照射すると,静止張力の著明な増加が認められた。また,この静止張力の増大は,L-histidine 50mMの処置によりほぼ完全に消失した。同時に測定されたNA放出量は,RB+光照射によって有意に増加した。^1O_2曝露後にESを行った場合,ESに応答する張力及びNA放出量には対照と比較して有意な変化は認められなかった。また,ESR法ではRB+光照射で^1O_2の発生を示す3本線のTEMPOラジカルの信号が確認され,L-histidine 50mM添加はその信号強度を有意に減弱させた。 本研究で得られて結果から,^1O_2処置は静止時での自発的NA放出を促進させるが,ESに応答するNA放出には影響を与えず,さらに^1O_2は,(1)血管平滑筋におけるCa^<+2>感受性の増加,(2)細胞内Ca^<+2>濃度の上昇,(3)α受容体のupregulationを引き起こす可能性が示唆された。
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