1999 Fiscal Year Annual Research Report
野生高等動物におけるヒ素の蓄積特性とその解毒機能に関する環境化学的研究
Project/Area Number |
11780393
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
國頭 恭 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (90304659)
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Keywords | ヒ素化合物 / 海洋汚染 / 海棲哺乳類 |
Research Abstract |
鯨類、鰭脚類におけるヒ素の体内分布と肝臓中ヒ素濃度を調べた。鯨類、鰭脚類ともに、ヒ素濃度は肝臓と腎臓で高く、筋肉で低かった。また鰭脚類では、毛のヒ素濃度は低く、毛へのヒ素の排泄は少ないことが推察された。大部分の種でヒ素濃度レベルに雌雄差は認められなかった。哺乳類におけるヒ素の母子間移行については研究が少なく、今後、ヒ素の胎盤移行、母乳中のヒ素濃度を明らかにする必要がある。また、ヒ素の年齢蓄積性は大部分の種において認められなかった。しかし、一部の種の特に若いオスで、加齢に伴いヒ素濃度が増加する傾向が認められた。海棲哺乳類は、ヒ素を主に有機態として蓄積することが知られている。また、実験動物を用いた研究により、有機ヒ素はタンパクとの親和性が低く、体外へ素早く排泄されることが報告されている。このためこのヒ素の年齢蓄積性は、餌生物中のヒ素濃度が高いため、特に成長速度が大きい若い個体において、ヒ素の取込み量が排泄量を上回ったものと考えられる。 食性とヒ素蓄積の関係を調べたところ、頭足類、甲殻類を餌生物とする種が、魚類を餌生物とする種よりヒ素の蓄積レベルが高いことが明らかとなった。頭足類、甲殻類では魚類よりヒ素濃度が高いことが知られているため、海棲哺乳類の肝臓中ヒ素濃度は餌生物中ヒ素濃度を反映していることが予想された。また鰭脚類において、海棲種が陸棲種より高濃度にヒ素を蓄積する傾向が見られた。この現象は水銀について報告されているが、ヒ素については現在まで知られていなかった。水銀の場合は、海洋生態系の食物連鎖が長く、かつ蓄積性の高い水銀化学種が海水中で多いことによる。しかしながら、ヒ素は食物連鎖中で生物濃縮しないため、水銀とは別の蓄積メカニズムが存在することが予想された。
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Research Products
(2 results)