2000 Fiscal Year Annual Research Report
近縁群における遺伝的変異解析に有効なマーカー探索法の構築
Project/Area Number |
11833009
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小菅 桂子 神戸大学, 理学部, 助教授 (50215266)
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Keywords | ブラキスコーム属 / RAPDマーカー法 / ゲノム再構成 / レトロトランスポゾン / 転位因子 |
Research Abstract |
本研究では近縁種間におけるゲノム再構成の実体を遺伝子レベルで明らかにするため、比較に適切なDNAマーカーを効率的、低コストで選出、解析可能な系の構築を試み、以下の結果がえられた。 実験材料には、オーストラリアの多様な生育環境に自生するキク科ブラキスコーム属Brachyscomeの植物群のうち、形態的は類似しているが著しい染色体数や染色体総長の変異が生じている、B.campylocarpa、B.eriogonaとB.smithwhiteiの近縁3種(Campylocarpa群)と基準種B.decipiensを用いた。ゲノムサイズが大きいB.eriogonaを中心に、RAPDマーカー法による種特異的な変異部位の探索を行い、得られたマーカーの配列決定とサザンハイブリダイゼーションによるゲノム内のコピー数の違いを解析した結果、ゲノムサイズ変動や環境適応に、以下の分子種が関与することが示された。 1.レトロトランスポゾン様分子種:copia-タイプとTy3-gypsyタイプの2種類があり、B.eriogonaとB.smithwhiteiの2種のみにシグナルが検出され、特に前者ではゲノムあたりのコピー数が多い。 2.トランスポゾン様分子種:B.eriogonaとB.smithwhiteiの2種のみに存在し、ゲノム内のコピー数は極めて少ない。 3.塩ストレス誘導型タンパク質様分子種:B.eriogonaとB.smithwhiteiの2種のみに存在し、ゲノム内のコピー数は極めて少ない。 4.形態や遺伝子の塩基配列類似度より、最近になって種分化したと推定される、B.eriogonaとB.smithwhiteiの2種のゲノムは1-3に示した分子種を共有している。これら2種間では、ゲノムサイズが約3倍と異なり、レトロトランスポゾン様分子種がゲノムサイズの再構成に関与していることが示唆された。 5.形態が類似するCampylocarpa群の3種のうち、B.campylocarpaには1-3に示した分子種が存在せず、この種におけるゲノム再構成には、異なるタイプの転位因子が関与した可能性が高い。
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