2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11838021
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Research Institution | NATIONAL CARDIOVASCULAR CENTER RESEARCH INSTITUTE |
Principal Investigator |
井上 裕康 国立循環器病センター研究所, 薬理部, 室長 (40183743)
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Keywords | シクオロキシゲナーゼ / プロスタグランジン / 血管内皮細胞 / マクロファージ / PPARγ / 核内受容体 / リポポリサッカライド / グルココルチコイド受容体 |
Research Abstract |
循環器系においては、プロスタサイクリン(PGI_2)とそれに拮抗する作用を持つトロンボキサン(TXA_2)産生のバランスがホメオスタシスに重要であり、そのバランスの破綻が動脈硬化症をはじめとする様々な病態と関連している。その視点から、PGI_2を産生する血管内皮細胞とTXA_2、PGE_2を産生するマクロファージ系U937細胞でのCOX-2発現の相違に注目して研究を進めている。 PPARγ内因性リガンド候補15d-PGJ_2によってCOX-2の発現がU937細胞では抑制されるが、血管内皮細胞では抑制されないこと、内皮細胞ではPPARγの発現がほとんど認められず、PPARγ発現ベクターを導入すると、15d-PGJ_2によるCOX-2の発現抑制が認められることを明らかにした。一方、U937細胞ではPPARγmRNAの顕著な発現が観察されるが、エンドトキシンであるリポポリサッカライド(LPS)刺激で下行制御された。このPPARγの発現パターンは、LPS刺激によって上行制御されるグルココルチコイド受容体(GR)の発現パターンと対照的であった。さらにU937細胞では15d-PGJ_2の前駆体となるPGD_2がCOX-2に依存して産生されることを見出した。これらの実験結果から、LPS刺激によりCOX-2の転写が活性化され、多量のPGが産生される場合、COX-2の発現はグルココルチコイドに対しての感受性が上がるのに対し、PPARγはそのような活性化状態のCOX-2制御ではなく、むしろ非活性化状態での制御に関与していること、つまりCOX-2発現は自分自身で合成されたPGD_2代謝産物がPPARγのリガンドとして作用することによって負のフィードバック制御されることが示唆された。このような制御機構は今までに報告されておらず、心血管系におけるCOX-2の役割を考える上で、重要な知見となると考えられた。
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[Publications] 井上裕康: "Feedback Control of COX-2 Expression through PPARγ"Journal of Biological Chemistry. 275・36. 28028-28032 (2000)
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[Publications] Y.Miwa: "15-Deoxy-delta 12,14 prostaglandin J2 induces G1 arrest and differentiation marker expression in vascular smooth muscle cells"Molecular Pharmacology. 58・4. 837-844 (2000)
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[Publications] J.Shao: "Regulation of Constitutive Cyclooxygenase-2 Expression in Colon Carcinoma Cells"Journal of Biological Chemistry. 275・36. 33951-33956 (2000)
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[Publications] M.Moriuchi: "Reciprocal Interactions between Human T-Lymphotropic Virus Type 1 and Prostaglandins : Implications for Viral Transmission"Journal of Virology. 75・1. 192-198 (2001)
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[Publications] 井上裕康: "COX-2の発現調節"医学のあゆみ特集「COX-2基礎と臨床」. (印刷中). (2001)
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[Publications] 井上裕康: "COX-2の理論と実証 基礎編第2章COX-2の分子生物学"メディカルレビュー社. 175(11) (2000)
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[Publications] 井上裕康: "現代化学増刊 プロスタグランジン研究の新展開 第13章第3節遺伝子の構造とその発現調節"東京化学同人. 224(6) (2001)