2001 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギを実験モデルとした内分泌かく乱物質の精子形成に及ぼす影響の分子機構解析
Project/Area Number |
11839001
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三浦 猛 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (00261339)
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Keywords | 環境ホルモン / 精子形成 / 雄性ホルモン / 生体外精巣器官培養 / ジエチルスチルベストロール / ノニルフェノール / ビスフェノールA / ニホンウナギ |
Research Abstract |
ジエチルスチルベストロール(DES)、ノニルフェノール(NP)及びビスフェノールA(BA)の精子形成に与える影響を、ウナギの精巣器官培養系を用いて解析した。 DES、NP、およびBAを添加して15日間培養し、各化学物質の精原幹細胞増殖能の有無を形態学的に調べた。その結果、3種の化学物質ともエストラジオール17β(E2)と同様の精原幹細胞の再生増殖分裂誘導能を示した。これら化学物質のE2に対する再生分裂誘導に関する比活性は、DESでは1/10、NPでは1/1,000,000、およびBAでは1/100であることが明らかになった。しかしながら、これらの化学物質の単独処理では、E2様の効果以外には精巣組織に与える顕著な作用は認められなかった。 魚類では、精子形成は、雄性ホルモンである11-ケトテストステロン(11-KT)によって制御されており、精子形成の進行過程中常に一定量の11-KTが血液中に存在している。そこで、DES、NPおよびBAの11-KT存在下での精子形成への作用機序を解析した。精子形成の進行自体に関しては、各物質とも大きな影響を与えていないようであったが、DESおよびNPに関しては、11-KTと供に培養液中に添加すると、リソソームや滑面小胞体などの細胞内小器官の増大を伴う、いわゆる食細胞化を思わせるセルトリ細胞の著しい肥大化が観察され、その結果として、精巣片中に含まれる生殖細胞の割合は、著しく減少した。 以上より、内分泌かく乱化学物質であるDES、NPおよびBAは、内因性の雌性ホルモンであるE2と同様の精原幹細胞再生増殖分裂誘導能を有していることが明らかとなった。また、DESとNPは、雄性ホルモン:11-KTと共存することで、セルトリ細胞の食細胞化と考えられる形質転換を誘導し、生殖細胞数の著しい減少を引き起こすものと考えられた。
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[Publications] T. Miura: "cDNA cloning of spermatogenesis relating substances and the analysis of their functions in Japanese eel"Perspectives in Comparative Endocrinology. 969-976 (2001)
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[Publications] M. A. Amer: "Involvement of sex steroid hormones in the early stages of spermatogenesis in Japanese huchen (Hucho perryi)"Biol.Reprod.. 65. 1057-1066 (2001)
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[Publications] T. Miura: "Japanese eel : a model for analysis of spermatogenesis"Zool. Sci.. 18. 1055-1063 (2001)
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[Publications] C. Miura: "PCNA protein expression during spermatogenesis of the Japanese eel (Anguilla japonica)"Zool Sci.. 19. 87-91 (2002)