2000 Fiscal Year Annual Research Report
日本の祭と民俗芸能における異国的形象の受容と伝承に関する研究
Project/Area Number |
11871050
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 助手 (90290923)
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Keywords | 異国 / 異人 / 唐人 / 琉球 / 朝鮮通信使 / 琉球慶賀使 / 獅子舞 |
Research Abstract |
本年度の調査は、昨年度の調査によって所在を確認した異国的形象の受容・伝承が認められる祭や民俗芸能の中から何カ所かを選び、観察及び関係者へのインタビューを中心とした現地調査を行うと共に、それらに関する既発表論文等の先行研究の集積、及び更なる同類の祭や民俗芸能の所在の確認を中心に実施した。 現地調査を行ったのは、岡山県牛窓町の唐子踊、三重県津市の唐人踊、鹿児島県隼人町の琉球人踊、鹿児島県市来町の七夕祭の琉球人行列、宮崎県諸県地方の琉球人踊や太鼓踊、沖縄県東風平町の唐人行列と大和人行列、佐賀県唐津市や岐阜県下呂町等、龍や獅子が出る各地の祭である。そのほか、佐賀県地方や長崎県地方等、九州を中心に、先行業績や先行研究や関連文献等の捜索を中心とした調査を行った。 現地調査で実際に観察することができた各地の祭や民俗芸能においては、幾つか共通する特徴を窺うことができた。例えば、ほとんどの事例において、朝鮮半島の芸能や沖縄の芸能を真似たり習ったとされているが、実際の朝鮮半島や沖縄の様相と、演者の扮装や踊り方等の内容はいずれも基本的には異なっていた。具体的には、殊更に異装・仮装をして唐人や琉球人を演じ、自分達とは異なる存在であることが強調されていた一方で、日本の三味線を弾く琉球人や沖縄の三線を弾く大和人が登場するというように、自分達の文化的脈絡との折衷が見られた。また、その起源を朝鮮通信使や琉球慶賀使との直接的な接触を現地の人々が語る場合が多いことも共通していた。しかし、実際に伝承されている地域を見てみると、宮崎県の諸県郡のように、接触が史実としては認め難い場合も少なくない。このことは、異国的形象の受容・伝承は、祭や民俗芸能の上演の際に採用される趣向のバリエーションとして人気が出て、流布したという在り方を想定すべきで、基本的にはその時代・地域の民俗的な異国(人)イメージの形成を巡る問題として検討される必要があることを示している。従って、こうした祭や民俗芸能の具体的な歴史的変遷の解明も今後の課題となろう。
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Research Products
(2 results)