2000 Fiscal Year Annual Research Report
報徳仕法受容以前の豪農家政改革=在来型仕法と地域に関する研究
Project/Area Number |
11871052
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
大塚 英二 愛知県立大学, 文学部, 教授 (40201975)
|
Keywords | 豪農 / 山田儀右衛門 / 家政改革 / 報徳仕法 / 分散 / 地域的金融秩序 / 信用構造 |
Research Abstract |
今年度も昨年度に引き続き報徳仕法に対比すべき豪農家政改革の一事例として、遠州榛原郡山田家の幕末期家政改革を検討した。昨年度に追加すべき成果は2つあり、1つは山田家の土地集積と経営悪化の原因を各種の経営帳簿から分析した点である。山田家は天明・天保飢饉時などに年貢立替機能を大いに発揮し土地集積を進めた。しかし、その際に融通した資金の多くは在郷の有力商人からの借入金であり、その返済に窮するとともに、村借金の責任者となることなどで、徐々に経営を悪化させたのである。 もう1つの成果は、山田家が本格的な家政改革=仕法に取りかかる前に、同家を救済するための大がかりな金融講が組織されていたことを確認し、分析したことである。この講は加入者が自己資金の増殖を図りつつも、山田家に低利融通して同家の経営立て直しに供するものであったが、世話人らの展望が甘く、集められた講金は単なる負債として残る形となった。この金融講の失敗を受けてなされたのが天保15年(1844)からの家政改革なのであった。 以上のように、今年度はいわば家政改革の前提となる部分で、山田家の経営状況とそれを取り囲む周囲の状況をより厳密な形で把握した。そして、これまでの成果を歴史科学協議会第34回大会において「豪農経営と地域金融秩序」という題目で報告した。来年度は、地域経済における信用構造保守のために山田家の救済が具体的にどのようになされたか更に追究し、最終的にそれが同時期遠州地方に導入された報徳仕法といかなる点で共通点や相違点があるのか比較検討して、本研究の課題を達成させたい。
|
Research Products
(1 results)