1999 Fiscal Year Annual Research Report
エチレンによる組織・器官分化の誘導とその分子細胞生物学的解析の試み
Project/Area Number |
11874120
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
風間 晴子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20052277)
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Keywords | エチレン / パターン形成 / 組織分化 / 器官分化 / 細胞分裂パターン / 孔辺細胞 / キュウリ / 気孔分化 |
Research Abstract |
エチレン処理によりキュウリ(Cucumis sativus L.)の芽生えの胚軸上に分枝状構造を誘導することが出来た.この構造は,胚軸にしばしば見られる不定根とは全く異なる形態を有するものであり,エチレンによる胚軸上の新たな器官・組織の誘導を意味する.このこれまで知られていなかった現象は,エチレンが細胞分裂能や細胞の極性への作用を通して,細胞分裂パターンに大きく影響し,新たな器官・組織分化を促すことによってもたらされるものと推測される.従って,こうしたエチレンの新たな作用の解析を通して,エチレンの形態形成への関わりを解明することが重要であると考え,研究を行ってきた. 上述の胚軸上の新たな『分枝状突起構造』は,その先端部に必ず一対の孔辺細胞が存在し,また,多くの場合,通常胚軸に見られるトライコームと同様の形態のトライコームが観察される.エチレンの濃度,処理のタイミングなど,エチレン処理条件を変化させた実験から,これらの組織分化は,エチレン処理の時期に孔辺母細胞,副細胞母細胞のような,潜在的に分裂能を有する細胞分裂が著しく促進されることによって起こると推測される結果を得た.こうしたエチレンによる細胞分裂の促進作用は『分枝状突起構造』に見られるばかりではなく,トライコームを形成するの細胞数の増加,維管束系の細胞数の増加,不定根の誘導促進など,芽生えのさまざまな組織に認められた.そこで,まず,比較的単純な実験系としてトライコームに着目し,エチレンによる細胞分裂能の促進作用,トライコームの分枝や向きの乱れの誘導作用について生理学的な側面からの定量的解析を試み,エチレンによる著しい作用を確認した. これらの結果の一部は本年2月にオーストラリアで開かれたRobertson Synposiumで発表した.
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