1999 Fiscal Year Annual Research Report
絶縁体/半導体へテロ超格子を用いたサブバンド間遷移レーザの研究
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11875079
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅田 雅洋 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (30167887)
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Keywords | 弗化カルシウム / 弗化カドミウム / シリコン / 量子効果 / 共鳴トンネルダイオード / サブバンド間遷移 / 超格子 |
Research Abstract |
本研究は、次世代の光ー電子融合集積回路を実現するための基本素子として、シリコン基板上にエピタキシャル結晶形成可能な絶縁体と半導体の積層超格子を用いた量子井戸サブバンド間遷移レーザを理論的に提案し、その実現のための基礎研究として、シリコン/弗化カルシウム(CaF_2:絶縁体)および弗化カルシウム(CdF_2)/弗化カドミウム(CaF_2)ヘテロ超格子の結晶成長技術の確立、及びレーザ素子実現への基礎となる実験的・理論的研究を目的とする。 この目的を達成するため、本年度は以下の成果を得た。 本年度は、超格子形成に用いる材料として、弗化カルシウム(CaF_2)および弗化カドミウム(CdF_2)を用い、この材料系を用いた超格子結晶成長と、2重障壁共鳴トンネルダイオード構造を用いた超格子サブバンドの形成確認、およびその制御性に関する評価を行った。 基板としてシリコン(111)を用い、超高真空中における表面処理により、原子レベルで清浄かつ平坦な基板表面を準備する。エネルギー障壁として機能する弗化カルシウムは、3分子層程度の極薄膜を成膜しなければならないが、これを弗化カルシウム蒸着分子線のイオン化ビームを用いて達成し、電極直径18μmφの範囲でリーク電流がほぼ完全に抑えられたダイオード構造の作成にはじめて成功した。また、弗化カルシウムと積層構造を形成する弗化カドミウムに関しては、結晶成長温度の最適化に加えて、結晶成長時のカドミウム汚染に対する徹底的な抑制対策を装置に加えることにより、弗化カドミウム層厚±1分子層の制御性を達成した。これらの確認は、2重障壁共鳴トンネルダイオードの微分負性抵抗特性の負性抵抗が発現するバイアス電圧のばらつきとピーク電流値の実験値を理論と比較することによって示された。また、評価に用いた共鳴トンネルダイオード構造において、室温でピーク電流対バレー電流比として10^5を超える値を観測した。この値はこれまで世界的に広く研究されてきた半導体ヘテロ構造を用いた共鳴トンネルダイオードの最大記録を上回るものであり、シリコン基板上で世界最高P/V比を有する量子効果素子がはじめて実現されたという意味でも歴史的な意味をも併せ持つものである。 次年度は、上記の超格子構造を3重障壁にしてサブバンド間遷移の観測を実現する予定である。
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[Publications] M.Watanabe,Y.Aoki,W. Saitoh and M.Tsuganezawa: "Negative Differential Resistance of CdF_2/CaF_2 Resonant Tunneling Diode on Si(111) Grown by Partially Ionized Beam Epitaxy"Jpn. J. Appl. Phys. 38巻2A号. L116-L118 (1999)
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[Publications] 渡辺正裕、筒井将史、浅田雅洋: "Si-CaF_2 及び CdF_2-CaF_2ヘテロ接合を用いたシリコン基板上共鳴トンネルダイオード"電子情報通信学会(電子デバイス研究会),ED99-316,. 99巻616号(講演番号11). 73-77 (2000)
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[Publications] 筒井将史、渡辺正裕、浅田雅洋: "Si/CaF_2 ヘテロ構造共鳴トンネルダイオードの作製と評価"第60回応用物理学会学術講演会. 2p-ZL-9. (1999)
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[Publications] 池谷吉史、渡辺正裕、浅田雅洋: "テラス幅を制御した Si(111)1^○ off 基板上への CaF_2イオンビームエピタキシャル成長"第60回応用物理学会学術講演会. 1p-T-4. (1999)