2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11CE2001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青柳 正規 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40011340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 美緒 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80126135)
馬場 章 東京大学, 大学院・情報学環, 助教授 (10208704)
吉田 伸之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40092374)
越塚 登 東京大学, 情報基盤センター, 助教授 (40262266)
大木 康 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70185213)
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Keywords | 象形文化 / 継時的研究 / 共時的研究 / 資料学 / 古代ローマ文化 / ローマ / ポンペイ / 文化相 |
Research Abstract |
本研究プログラムの目的は、人文科学がその研究基盤として確立してきた原資料批判の方法論を再評価すると同時に、めざましい進捗をみせている情報科学の成果を活用して、一定の文化相あるいは歴史的個体が有する継時的・共時的空間の復元と構造の解明を可能とする新たな資料学の構築である。このため、造形資料を中心とする象形文化資料のデジタル画像と記載データを収集蓄積して象形文化アーカイヴを構築することによって、資料の検索・抽出・組合せが可能な象形文化アーカイヴを活用すると同時に、これまで蓄積されてきた文書資料を中心とする継時的研究成果を用いてより実相に近い歴史的個体の共時的空間の復元とその構造解析を行うことを目的としている。以上の目的を実現するために研究を行い、以下のような成果・実績をあげた。 A.象形文化アーカイヴの充実をはかるため古代ローマ文化と日本近世文化を中心とする象形文化資料の収集・整理および記載を行い、同アーカイヴを構築し、資料の検索・抽出・組合せを可能とするアーカイヴシステムを創ることができた。とくに「ポンペイ画像資料集積・検索システム」および「ローマ画像資料集積・検索システム」は主題、カテゴリー、製作年代、所在場所等による検索・抽出が可能であり、ヨーロッパの国際学術集会でも公表し、大きな注目を集めた結果、来年度もスペイン等の国際学術集会での発表を要請されている。 B.象形文化資料のデジタル化に当たっては、新撮の銀塩写真を収集し、そのフィルムからのデジタル化を行った。デジタル画像がハード、ソフトに依存しているため、長期の保存・活用を前提としたとき、銀塩写真を併存させることが必要と考えたためである。このことと関連して、学術資料としてのアナログ写真とデジタル画像の比較研究を行い、すでに撮影した被写体を観察しながら、アナログ写真とデジタル画像の画質を比較研究すると同時に、保存・分類・比較等の要件にそれぞれがどのような特性を有しているかを検討した。 この結果、形状記録には関してはデジタル画像とアナログ画像に大きな相違のないことが判明したが、色彩表現に関してはアナログ画像が優れていることが明らかとなった。ただし銀塩写真は経年劣化を生じるので、適切な併用が必要であるという結論に達した。 C.象形文化資料の記載に関しては複数言語を用い、その多国語使用の可能性を研究した。日本近世文化、中国文化関係の記載に関しては地名表記に多数の漢字、異体字が必要なため、GTフォント、「超漢字」の利活用を試み、一定の成果をあげることができた。 D.稀覯本のような貴重な文献資料のデジタル化を行い、その利活用の方策を研究した。とくに100年以上を経過した象形文化資料が経年変化や破壊・逸失した場合、これらの稀覯本は学術資料としての価値を増大することを明らかにすると同時に、現存しない象形文化資料の復元研究にとって有効であることを証明した。例えば、1800年前後に活躍したピラネージの版画集のデジタル画像と現代の以降との比較により、ピラネージの創造性だけでなく当時の新古典主義の特質を解明することもできた。 E.以上の成果を踏まえて、象形文化アーカイヴ活用による共時的研究を行った。とくに「ポンペイ画像資料集積・検索システム」を用いて、ポンペイ遺跡内の地区ごとの壁面装飾の違いを明らかにし、地区の社会的特徴(商業地区か住宅地区か、商業地区であればいかなる業種が中心か、住宅地区であれば富裕層か困窮層か等)を解明することができた。 F.日本近世文化に関しては、国絵図や大江戸図などのアーカイビングを行い、とくに回向院周辺の広場的空間の復元を行うことによって、共時的研究の成果をあげた。 上記の成果実績を踏まえ、来年度からはポンペイ、ローマなど古代ローマ文化に関する象形文化資料の充実を図ると同時に、文化相の共時的研究をさらに進める予定である。特にポンペイに関しては、全体で9街区あるうち、第1区、第6区、第9区のみが象形資料をほぼ完全に収集済みであるのに対し、のこりの6区は不完全な状況であり、その完成を目指す予定である。このため、現在の研究組織をさらに継続させるだけでなく、象形文化研究拠点のハード、ソフトの両面でさらに改善を図り、真の国際的な「卓越した研究拠点」に成長させる予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] M.Aoyagi(共著): "Mosaici e sectilia pavimenta della villa romana di Cazzanello(VT)"Actes du VIII Colloque de l'Association Internat. pour l'Etude de la Mosaique Antique. 8. 815-828 (2001)
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[Publications] M.Aoyagi(共著): "La Casa di Giulio Polibio -Note tecniche e metodologiche alla realizzazione di un modello virtuale"第五回VRラボシンポジウム〜文化財とVR〜 関連研究論文別刷集(東京大学バーチャルリアリティー教育研究共同体). 21-45 (2002)
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[Publications] M.Aoyagi(共著): "Lo scavo della villa romana di loc. Cazzanello, presso tarquinia, Nota preliminare"Rendiconti della Pontificio Accadenia romana di Archeologia. 75. 187-244 (2003)
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[Publications] M.Aoyagi(共著): "I centri archeologici"Atti del Convegno internazionale su pompei e le Sue Documentazioni. 印刷中. (2004)
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[Publications] 岸本美緒: "「風俗」与歴史観(中文)"新史学. 13巻3期. 1-20 (2002)
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[Publications] 馬場章: "南葵文庫国絵図のデジタル化とiPalletnexusの開発"月間IM(Journal of Image & Information Management). 第42巻第3号. 10-16 (2003)
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[Publications] 吉田伸之(共著): "大江戸日本橋絵巻「煕代勝覧」の世界"講談社. 180 (2003)
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[Publications] 佐藤康宏(共著): "自画像の美術史"東京大学出版会. 282 (2003)
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[Publications] 小佐野重利: "サンタ・マリア・デッラ・スカラ聖堂のバディーレ家一門による壁画"美術史論叢. 19. 133-156 (2003)
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[Publications] 大木康: "馮夢龍『山歌』の研究"勁草書房. 324 (2003)
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[Publications] 浦一章: "ダンテとイタリア文学の創造"岩波講座文学13-ネイションを超えて. 121-136 (2003)