2011 Fiscal Year Annual Research Report
大正期における日中の思想連鎖―「聯邦論」を手がかりに
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11F01010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 聡 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHU Lin 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 思想連鎖 / 国家体制の構想 / 「聨邦制」 |
Research Abstract |
いままで「封建・郡県」論あるいは「聨邦論」をそれぞれ分析した研究は存在するが、「封建-郡県」論を手がかりに、当時日中の議論を関連付けさせつつ「聨邦論」をめぐる大正・民国期の政治思想交流の側面に着目し、激動の時代状況における知識人の思想と活動を描写する研究はほとんどない。 本研究は、近代国家の建設を緊急課題とする世紀転換期において、「封建・郡県」という東アジアの伝統的概念が近代日中の「聨邦論」にいかに発展し、内藤湖南・吉野作造・橘撲、孫文・梁啓超・章柄麟など同時代の日中の代表的な知識人が、いかに歴史像を再構築することによって国家体制のあるべき姿および変革の方法論を提示したのかという問題に焦点を絞り、大正期における日中の思想的連鎖の一側面を明らかにすることを目指す。 研究成果に示されているように、本年度は、主に研究の重点を内藤湖南、梁啓超など個別の思想家の中国国家体制構想の解明に置き、思想史的テキスト分析を中心に考察を行なった。今後は、さらに、その上で、点から面へ、知識人たちを時代の流れの中に位置付け、個人を超えた大きな歴史の潮流の中で彼らの認識のあり方そのものを問い、国家体制をめぐるその思想的葛藤の軌跡を浮き彫りにさせたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、本年度は、研究の重点を個別の思想家の中国国家体制構想の解明に置き、日中双方の史料を活用しながら、取り上げられる対象の残した文献類(著作集、日記、手紙など)を主な素材として思想史的テキスト分析を中心に考察してきた。雑誌に論文を掲載する形で一部の研究成果を公表しており、おおむね研究計画どおりに順調に進展しているように思う。研究成果の詳細は論文リストを参照されたい。
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Strategy for Future Research Activity |
いままでの研究成果を踏まえ、今後は、思想家の既出の全集・選集に収録されていない文章を含め、できるかぎりの現地資料調査をし、検証を進めていきたい。例えば、中国語の雑誌については、中国国家図書館、上海档案館で集中的に収集することが可能である。 さらに、段階的な研究成果をまとめ、学会での報告や関連雑誌への投稿を試み、関連分野の研究者と交流し、視野を拡げつつ、自身の研究の不備の点を見つけ、さらなる改善を期する。例えば、2012年7月に上海・復旦大学、12月に韓国・ソウルで東アジア歴史認識などをめぐって研究発表を行なう予定である。
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