2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11F01208
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 嘉浩 独立行政法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PONNURENGAM SivakumarMalliappan 独立行政法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 外国人特別研究員
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Keywords | シクロオキシゲナーゼ / 進化分子工学 / スーパー阻害剤 / アプタマー |
Research Abstract |
シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸をプロスタノイドと呼ばれる生理活性物質の一群に代謝する過程に関与する酵素で、COX-1とCOX-2の2つのアイソザイム(アイソフォーム)が存在する。それぞれ約600アミノ酸残基からなる蛋白質でありアミノ酸配列の相同性は高いが(約60%の相同性)、組織における発現は異なる。COX-1は全身の組織に広く分布し、小胞体に発現している酵素で、種々の刺激により誘導されることはなく、常時細胞内に一定量存在している。一方、COX-2は脳や腎臓などで恒常的に発現するがその他の組織では普段は発現が低く、炎症組織において発現が誘導されることから誘導型と称される。COX-1とは異なり、COX-2は主に核膜に存在しステロイドによってその活性が強く阻害される。COX-2発現により腫瘍増殖の亢進やCOX-2経路阻害により発がん抑制が見られるなど、COX-2の発がんへのなんらかの関与が示唆されており、COX-2を選択的に阻害する薬剤によるがん治療薬の臨床応用が期待されている。特に、COX-2の高発現が大腸がんやその転移でみられることから、COX-2選択的阻害剤を利用した大腸がんの予防や治療への応用が期待される。そこで、本研究では、COXの阻害剤CHALCONEと1,3,5-TRIPHENYL-2-PYRAZOLINE誘導体にアプタマー機能を付与する新しい方法(化学拡張進化分子工学)を生み出し、COX-2選択的阻害剤の開発を目指した。まず、阻害剤をフェニルアラニンに結合し、tRNAに担持させた。そして、ランダム配列DNAをテンプレートにして、この阻害剤担持tRNA存在下で無細胞翻訳系を用いて翻訳することにより、阻害剤含有ランダム配列ペプチドのリボソームディスプレイを調製した。ディスプレイされたペプチドからCOX-2に結合するものを選別し、ペプチド・リボソーム・mRNA複合体を回収し、mRNAをPCR法で増幅し、再度無細胞翻訳系で翻訳し、アフィニティ選別を繰り返した。これまで3回のラウンドを行い、結合性の高いペプチドが得られるようになったため、配列を決定する作業に入った。今後、配列に収束が見られるまでラウンドを繰り返し、最終的に選別された配列に基づき、有機合成によりペプチドを調製し、その活性を評価する予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響で若干来日が遅くなったが、懸命な努力により、現在その遅れを取り戻し、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで3回のラウンドを行い、結合性の高いペプチドが得られるようになったため、配列を決定する作業に入っている。今後、配列に収束が見られるまでラウンドを繰り返し、最終的に選別された配列に基づき、有機合成によりペプチドを調製し、その活性を評価する予定。これまで特に問題点はなく、今後も順調に進むと思われる。ラウンドの繰り返し回数は多くなる可能性はあったり、選択されたものの活性そのものが期待さるほどでないことも考えられるが、原理的には、COX-2により選択的に結合するペプチドが得られると期待できる。
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