2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11F01310
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MHANDO D.G. 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | キリマンジャロ / 国際市場 / コーヒー / タンザニア / 流通 |
Research Abstract |
1990年代の中頃以来、長いあいだ低迷を続けていたコーヒーの国際価格は、2000年代の中頃になって上昇に転じ、2011年には10年前の約30倍の値をつけ、コーヒー産業はようやくかつての活気を取り戻しつつある。好景気の主たる要因は中国やインドなどの新興国でコーヒーが飲まれるようになったことと、タンザニアに限っていえば、日本への輸出が急増したことによる。「キリマンジャロ」のブランドで知られるタンザニア産コーヒーは、品薄なマイルド・アラビカ・コーヒーとして流通しているが、同じマイルド・アラビカに分類されるイェメン産のモカ・コーヒーが残留農薬規制で日本への輸出が禁止されたため、キリマンジャロ・コーヒーの需要が高まっていたのである。しかし、こうした好景気は一時的であり、内需をもたないタンザニアのコーヒー産業が、今後も世界市場の動向に左右され続けることに変わりはない。また今年は、ブラジル産コーヒーのかつてない豊作が報じられており、すでに世界市場では20%近くも値を下げている。 この研究では、環境などによって収量および価格が大きく変動するコーヒーがどのように流通しているのかを明らかにする。キリマンジャロ・コーヒーの最大の輸入先である日本においてコーヒー取引の実態を調査し、コーヒー市場の国際的な価格変動を日本の企業がどのように受けとめ、対応しているのかを明らかにする。同時に、価格変動に対する生産地の反応、すなわちタンザニアのコーヒー農家、政府、流通業者の認識と対処を調査する。そして、これらデータを同じ時間軸で比較することによって生産地から消費地までの流通の全貌を明らかにしていく。平成23年度は、日本において関連資料を収集するとともに、タンザニアの主要生産地であるキリマンジャロ州で末端流通機構の実態調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国とインドにおけるコーヒー消費者数の動向に着目して、統計資料を収集・分析した。中国の統計資料は入手が困難であったが、数少ない資料から中国では雲南省を中心にコーヒーの生産が急速に拡大しており、内需の多くを国内生産が占め、不足分はロブスタ・コーヒーの輸入で補っていた。インドもロブスタ・コーヒーを輸入しており、これら新興国の消費動向はタンザニア・コーヒーの価格の高騰には直接関係していないことがわかった。そこで、調査対象とする消費国を、近年急速にキリマンジャロ・コーヒーの輸入量を増やしている日本に絞り、統計資料の分析を始めた。また、タンザニアの調査では、コーヒーの品質によって売り先を変える、ローカルな流通システムの存在を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、これまでの文献研究ならびに資料収集を継続しつつ、日本企業やコーヒー・フェアを訪ねて企業から直接情報を得るとともに、タンザニアの生産と流通に関する現地調査を実施する。1990年代におけるコーヒー価格の低迷に対する農家の反応は、コーヒー園を放棄した農家や適切な管理ができずにコーヒー病害の蔓延を許してしまった地域、逆にコーヒー園を拡大した地域、高品質コーヒーの生産に特化しながら農民グループを組織してオークションに参入していった農家など、地域によってさまざまでであった。それぞれの地域・農家は、今の好景気をどのように受けとめ、今後も起こりうる価格変動にどのように対処しようとしているのかについて農家の意識調査をおこなう。また、フェアトレードや企業の社会的責任(CSR)がタンザニアの流通システムのなかでどのように組み込まれ、機能しているのかも明らかにする。
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