2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11F01324
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FRIEDRICH Daniel 東京大学, 宇宙線研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 重力波 / レーザー干渉計 / 量子雑音 / 輻射圧雑音 |
Research Abstract |
本年度は、今後予定されている輻射圧の量子的な揺らぎ(輻射圧雑音)の観測と低減にとって重要な要素技術の実証をおこなった。それは、古典的な輻射圧自身を応用した実験であり、大きく2つの成果を得た。 一つは、輻射圧を用いた鏡の姿勢制御の原理検証である。超軽量鏡と通常サイズの鏡からなる高フィネス・光共振器においては、輻射圧の角度反バネ効果によって引き起こされる超軽量鏡の姿勢の不安定性が大きな問題となるが、超軽量鏡におけるビームの位置を通常サイズの鏡の姿勢制御によりコントロールすることでこの不安定性を低減できることを実証した。具体的には、光共振器の透過光を位置センサーでモニターし、その信号を用いて姿勢を安定化する制御システムを構築した。同時に、超軽量鏡の姿勢方向の揺れを光てこを用いて測定することで、制御システムによってその揺れが小さくなることを確認した。この成果は、我々の実験において有用であるだけでなく、光と巨視的な物体が結合する系(オプトメカニカルな系)において有用な制御手段の先駆的実験といえる。連携研究者の森氏がこの研究で国際学会のポスター賞を受賞し、またその成果を博士論文としてまとめた。 もう一つは、輻射圧を利用した量子効率の精密測定である。輻射圧雑音の低減にとっては、光検出器の量子効率を含むさまざまな光学的ロスが問題となる。しかし、従来のパワーメーターでは精度が低く、本実験に必要な量子効率の計測ができないという問題があった。そこで、輻射圧が引き起こす超軽量鏡の変位を測定することにより、光のパワーを精度よく測定し、それによって光検出器の量子効率を高精度で測定する実験をおこなった。すべての誤差の影響を測定から見積もり、誤差1%以下の精密測定が可能であることを実証した。この成果は世界最高精度の新しいタイプのパワーメーターが構築できたことも意味する。これに関して現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定されていた研究の目標がほぼ達成できたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー光の周波数雑音は、干渉計の非対称性と結びつき、輻射圧雑音の観測を妨げる可能性がある。そこで、固定の光共振器を用いて周波数安定化システムを構築し、これを動作させる。また、超軽量鏡は石英ファイバーにより吊り下げられるが、接着剤により機械的ロスが増え、熱雑音が大きくなる。これを低減するため、機械的ロスが小さい接着方法を開発する。
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Research Products
(1 results)