2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピンクロスオーバーを示すナノ磁性体のミクロ多自由度ハミルトニアンに基づく理解
Project/Area Number |
11F01326
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAKER MichaelLloyd 東北大学, 金属材料研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | スピンクロスオーバー / 分子磁性 / 強磁場 / X線分光 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究の目的は、超強磁場X線MCD分光及び強磁場中性子回折による分子磁性体のスピンクロスオーバー転移の研究を行うことである。スピンクロスオーバー現象は、磁気イオンの軌道の結晶場分裂が磁場や温度等の外部変数により高スピン状態とスピンの小さな低スピン状態の間を移行する現象であり、複数の自由度が絡んだ転移として興味がもたれている。 24年度は、Fe-Co1次元錯体に関してXMCD実験を実施し、軌道・価数毎の磁気偏極を測定する事に成功し、スピンクロスオーバー転移におけるスピン状態の変化をミクロに同定した。さらに、スペクトル形状から、結合状態、特にBack-bondingに関する評価が出来る事が明らかになり、量子化学計算と照合してその解析を行った。さらに、スピンクロスオーバー転移における新しい効果として、試料の加圧整形により高スピン状態が凍結する効果が明らかになった。この効果は圧力で転移が変わる効果ではなく、圧縮後圧力を抜いても効果が持続する現象である。スピンクロスオーバー現象におけるエントロピー変化が阻害されることに原因があると思われ、その詳細をさらに研究する予定である。また、本研究で確立したXMCD手法を用いて、Fe42という混合原子価に関して研究を行った。この物質は、これまで得られた最も大きな基底状態スピンをもつ強磁性クラスターであるが、XMCDにより価数と磁気偏極を定量的に評価する事に成功した。年度後半では、非弾性中性子散乱を用いて、ラジカルと希土類磁石のヘテロスピンクラスターの磁気結合の評価を行った。これらの系では、3d遷移金属と希土類の組み合わせより強い磁気結合が得られており、今回の実験で交換相互作用を決定する事が出来た。その他、ESRを用いてCoを含む錯体等においてスピン状態の変化の研究を行い、スピンクロスオーバー転移に関して多面的な理解が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子散乱とXMCD分光を中心にスピンクロスオーバー現象の理解が進展しており、順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間が10月までであるので、今後は、これまでに行った実験に関してまとめ、論文として発表する事に重点をおく。
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