2012 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアと日本の浅熱水性金銀鉱床におけるSe型及びTe型鉱化作用の成因
Project/Area Number |
11F01330
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松枝 大治 北海道大学, 総合博物館, 資料部研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YUNINGSIH E.T. 北海道大学, 総合博物館, 外国人特別研究員
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Keywords | 浅熱水性金銀鉱床 / Te-Se鉱化作用 / 物理化学的生成条件 / 流体包有物 / 安定同位体比 / 鉱石鉱物 / 島弧環境 / インドネシア |
Research Abstract |
島弧環境では活発なマグマ活動と熱水作用に伴い多様な浅熱水性金銀鉱床が発達することから、本研究では類似の島弧の地質テクトニクス環境にあるインドネシアと日本両国の浅熱水性金銀鉱化作用の比較研究を行い、Se及びTeタイプに着目した鉱床生成条件と成因の解明を目的とした。平成24年度は、両地域の複数のTe型とSe型鉱床を対象に入手サンプルの岩石学的記載、流体包有物及び安定同位体比測定等の地球化学的分析などを実施した。記載学的研究では、研磨片及び両面研磨片を用いた鏡下観察、EPMA及びBSE像などの検討を基に、鉱石鉱物の組織、共生関係及び化学組成を決定した。西ジャワ島の主要金銀鉱床については、主に過去の研究成果を基にした比較検討に加え、Arinem鉱床では特に詳細な検討を行った。一方、西南北海道の浅熱水性貴金属及びベースメタル鉱床も研究対象としたが、現在は全鉱床が閉山のため良好サンプルの入手が困難であることから、補足的に北大総合博物館コレクションを使用した。 西南北海道の金銀鉱床産鉱石は各種テルル化物や含テルル鉱物に富み、一部ではセレン化物や含セレン鉱物に富むものもある。それらは含Te、Se硫化鉱物や硫塩鉱物及び酸化鉱物など多様な鉱物群の随伴が特徴的で、Te及びSe含有量も様々である。一方、北海道ほど顕著ではないが、西ジャワ島にも同種鉱物群の産出が普遍的に認められることから、TeやSeが浅熱水性貴金属鉱床産鉱石に含まれる各種金属元素の主なキャリアーであることが強く示唆された。また、鉱石中の脈石鉱物(石英等)中の流体包有物の均質化温度及び塩濃度測定結果と鉱石鉱物組合せを基に、各鉱床の生成条件の推定を行った。 得られた研究成果は国内外の関係国際シンポジウムや学協会等において公表し、1件は国際シンポジウムで最優秀論文賞を受賞した(研究発表の項参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシアと日本両地域の浅熱水性鉱床産鉱石におけるTe及びSe鉱物組合せは共通点があり、鉱床母岩は中新世変質火山岩類及び細粒砕屑岩類からなる。流体包有物の均質化温度は200~250℃で塩濃度は1~3wt%であるが、いくつかは多少高い値を示して低~高硫化型の鉱化作用の特徴を示唆する。鉱化帯近傍には酸性~中性貫入岩類が発達し、後期中新世~更新世の鉱化年代を示す。鉱石、母岩及び関係貫入岩中の定量元素分析がほぼ完了したため、それらを基に鉱石中の濃集金属元素の起源推定と測定済みの鉛同位体比の解釈を実施中である。得られた結果は、関係学会・国際シンポジウム等で逐次積極的に公表してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度にあたるため、西南北海道における各鉱床の研磨片等の再チェック及びそれらのEPMA再分析に加え、特定鉱床(洞爺・サンル鉱床)についてのEDS分析も実施する予定である。それらを基に、西南北海道の各鉱床及びサンル鉱床産鉱石から得られた分析データの定量的解析を行い、Te及びSe型金鉱化作用の生成条件推定及び成因解明などを行うと共に、最終的に日本とインドネシア両国における鉱化作用の比較検討と成因解明に迫る予定である。本研究を通じて得られた成果は関係学協会及び国際シンポジウム等で発表し、関係研究者との積極的な討論を行うと共に、最終的に印刷論文として公表する予定である。
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Research Products
(7 results)