2012 Fiscal Year Annual Research Report
電気光学的手法による量子ドット励起子のスピン状態制御に関する研究
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11F01356
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒川 泰彦 東京大学, 生産技術研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HARBORD Edmund 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 量子ドット / 量子情報 / 励起子 / スピン / 偏光 |
Research Abstract |
半導体量子ドットは、次世代レーザや単一光子・もつれ光子源などの最先端フォトニックデバイスおよび量子情報技術において中心的役割を果たすと期待されている。特に、量子ドット内部に閉じ込めた励起子・電子/正孔スピンは多様かつ有用な量子状態を提供し、コヒーレンス時間の長い量子メモリや光-スピン間における量子メディア変換媒体としての応用が検討されている。本研究では、本質的に超微細相互作用が弱く、量子メモリの良い候補である量子ドット内単一正孔スピンに着目し、その物性の詳細評価ならびに電気光学的制御・読み出し技術の確立を目指して研究を進めてきた。昨年度までの研究では、低温顕微分光システムの拡充と精密偏光評価系の構築、並びに正荷電励起子発光を示す量子ドットサンプルの作製とその物性評価を行った。 本年度は、正荷電励起子についてさらなる分光実験を進め、その発光状態制御技術の発見および、偏光分光測定による価電子帯混合度の評価に成功した。まず前者においては、円偏光励起レーザの強度を制御することで、正荷電励起子発光における円偏光度、直線偏光度およびその偏光角を操作できることを示した。この現象は、核スピンとの相互作用を介した実効的な価電子帯混合度の差に起因すると考えられる。また、この技術は偏光度が制御可能な単一光子源などへ応用可能と期待される。次に後者においては、大多数の量子ドットにおいて直線偏光度・偏光角が価電子帯混合度により決定されていることを示し、その事実を利用することで、正荷電励起子の直線偏光状態から価電子帯混合度を評価することに成功した。加えて、様々なサンプル間の比較を行うことで急速熱アニールにより価電子帯混合度が増加することを見出し、量子ドット内正孔に関する重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に向けて、量子ドット内荷電励起子に対する深い物理的知見を得るとともに、分光評価技術における多くの進展が達成できたため
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Strategy for Future Research Activity |
量子ドット荷電励起子に対するさらなる制御・評価技術の構築および、理論計算を含めた解析を進め、その物性の詳細を明らかにする。特に、磁場印加によるスピン状態制御や、高精度エレクトロニクスを駆使したスピンの動的制御およびそのダイナミクスの評価を目指した基盤研究を行う。
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