2011 Fiscal Year Annual Research Report
走査型カー回転分光によるシリコン中の空間電荷効果の検出
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11F01358
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白石 誠司 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DELMOPICAZO Michael 大阪大学, 基礎工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 磁気抵抗効果 / 空間電荷効果 / p型シリコン |
Research Abstract |
平成23年度では、p型とn型のシリコンを用いて二端子・マルチプローブのシリコンデバイスを作製し、空間電荷効果によって誘起された大きな磁気抵抗効果の測定実験を行った。今回の実験では、はじめてp型シリコンデバイスにおいて空間電荷効果によって誘起された大きな磁気抵抗効果を観測した。低温(35ケルビン)では、n型シリコンデバイスと同じようにp型シリコンにおいても、空間電荷効果によって誘起された大きな磁気抵抗効果は印加磁場に対してリニア的依存性を示していることが分かった。この実験では、p型シリコンであればホール、n型シリコンであれば電子が伝導のキャリアになるため、ホールによる空間電荷効果も大きな磁気抵抗効果を引き起こすことができることも示した。 しかし、室温(300ケルビン)では、p型とn型のシリコンデバイスは大きな異なる特性を示していた。それは、n型シリコンデバイスでは、電流-電圧(I-V)特性が低電圧のオーミック領域(I∝V)と高電圧の空間電荷効果(I∝V^2)領域で分かれているが、p型シリコンデバイスでは、I-V特性が低電圧のオーミック領域(I∝V)と高電圧の空間電荷効果(I∝V^2)領域に加え、オーミックと空間電荷効果領域の間にI∝V^<1/2>の中間領域が存在している。これは、p型半導体中にマイノリティーキャリアの電子とマジョリティーキャリアのホールが同程度に混在し、しかも電子とホールの再結合がある伝導領域で見られる電流-電圧特性である。すなわち、p型シリコンデバイスに電子が注入されていることを意味している。これは、Hall測定によって明らかにした。通常、半導体における空間電荷効果の測定では、I∝V^<1/2>の領域があまり観測できない伝導領域であるが、今回は、はじめてシリコンでの観測に成功した。この結果は、電子とホールが混在している場合の大きな磁気抵抗効果のメカニズムの解明に役立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画通り、研究が順調に進んでいるためである。 p型とn型のシリコンを用いてデバイスを作製し、空間電荷効果によって誘起された磁気抵抗効果を測定した。その結果、室温においてp型とn型のシリコンデバイスは磁気伝導特性が異なることが分かった。p型シリコンデバイスでは、n型シリコンデバイスに見られなかった、マイノリティーキャリアの電子とマジョリティーキャリアのホールが同程度に共存している空間電荷伝導領域を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画が順調に進んでいるため、引き続き平成24年度の研究計画通り、p型とn型のシリコンを用いて、空間電荷効果によって誘起された磁気抵抗効果の測定を行い、さらに今年度からシリコンへのスピン注入実験も行い、シリコン中のスピン輸送に対する空間電荷効果の影響を調べる。
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