2012 Fiscal Year Annual Research Report
高温環境下における酸化物分散強化鋼の機械的特性と微細組織変化の相関
Project/Area Number |
11F01381
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 弘亨 東北大学, 金属材料研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI Yanfen 東北大学, 金属材料研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | Fusion reactor / structual materials / oxide dispersion strengthening steels / cerrp prorerties / microstructure / nano-particles / corrosion compatibility / electron irradiation |
Research Abstract |
【背景】 酸化物分散強化鋼(ODS鋼)は923-973Kでの高温強度やクリープ特性に優れ、また照射耐性も良好であることから、核融合炉ブランケット構造材料の候補材料として研究が盛んに進められている材料である。本研究では、9Cr-ODS鋼の長期供用を見据えて、高温環境における機械強度および組織安定性、増殖材および冷却材となる液体Liとの共存性、ならびに強化因子である酸化物ナノ粒子の照射下安定性に関する実験的研究を行った。 【実験方法】 9Cr-ODS鋼に対し、核融合炉ブランケット構造材の設計上限温度とされている973Kにおいて真空中最大10000時間の焼鈍実験を行った。熱処理後、試料は室温にてナノ硬度、ビッカース碑度を測定し、g73Kにて引張試験とクリープ試験を行った。機械試験前後には微細構造観察として走査電顕(SEM)、特性X線分析(EDS)、後方散乱電子回析(EBSD)、x線回折(xRD)および透過電顕(TEM)を用いて観察、分析を行った。バッチ式腐食試験では液体Li中で873K×250時間の試験を行った。さらに照射試験は阪大超高圧電子顕微鏡を用いて0.75~2MeVの電子照射を673~873Kで実施した。 【結果および考察】 機械強度測定から9Cr-ODS鋼では熱処理に伴う若干の軟化が観察された。このとき粒径は僅かに上昇したものの、粒界関係や粒界密度には影響が見られず、微細組織は安定であり酸化物ナノ粒子による分散強化の効果が確認された。 一方でM_<23>C_6析出物は粗大化し、脆化因子であるM_6Cの形成も観察された。 腐食試験後の測定により、わずかな重量減少と表面近傍の硬度低下が観察された。表面観察から不均一腐食が見られ、結晶粒界の優先的腐食が観察された。 電子照射実験では、既往研究とは異なり、実験範囲内の全ての電子エネルギー条件で酸化物ナノ粒子の不安定化が確認された。1MeV程度以下のエネルギーでは酸化物の構成原子のはじき出しは生じず、0.75MeV以下では母相でもはじき出しが生じない条件である。この結果は、はじき出しエネルギー以下のエネルギー付与による酸化物粒子の不安定化、または酸化物粒子と母相界面の原子ミキシングを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究提案に係る実験は全て当初計画に従って行われ、研究員の産休期間を除き順調に進行した。当該研究員は本分野において長い経験と知見、技術ノウハウを有しており研究遂行には支障はない。研究に使用する核種装置は、研究室にて使用可能であり、あるいは阪大や核融合研において共同利用や共同研究として使用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本事業の最終年度であり、最終的な実験を行うと共に、研究の取りまとめを行う。 第一に、現在進行中の1万時間クリープ試験を完了させる。試験片は微細構造分析を各種分析、観察装置を用いて行い、主に結晶粒界の転位蓄積や酸化物ナノ粒子の安定性などに関する情報を取得する。クリープ破壊データはLarson-Miller係数を用いて整理し、これから核融合炉ブランケットの設計条件内での同材料の安定性を確認する。 また阪大における電子照射その場観察試験を継続する。 取得された知見は、日本原子力学会、核融合炉材料国際会議(ICFRM-16)等において発表すると共に、論文化する。
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