2011 Fiscal Year Annual Research Report
BRG1によるクロマチン構造変化を介した細胞初期化促進メカニズムの解明
Project/Area Number |
11F01388
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山中 伸弥 京都大学, iPS細胞研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Shin-Il 京都大学, iPS細胞研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | Inducible Pluripotent Stem (iPS) cell / Reprogramming / Chromatin Remodeling / Epigenetic Regulation / Embryonic Stem (ES) cell / Regenerative Medicine |
Research Abstract |
具体的内容 分化した体細胞に4種類の転写因子Oct4,Sox2、Klf4,c-Mycを強制発現させることで、すべての体細胞に分化しうるiPS細胞を樹立することができる。しかしながら、iPS細胞樹立のメカニズムについては不明な点が多い。iPS細胞の樹立過程では、遺伝子配列の変化を必要としない一方で、DNAメチル化やピストン修飾などエピゲノム修飾の大きな改変を伴う遺伝子発現変化が観察される。クロマチンリモデリング酵素の一つであるBRG1はES細胞の多能性維持に重要であることが示され、BRG1を介したクロマチン構造変化が多能性幹細胞の維持およびその樹立に関与していることが示唆されている。そこで、我々は、BRG1が体細胞初期化に関与する可能性を考え、薬剤誘導可能な初期化因子を導入した細胞を用いて、iPS細胞誘導の様々な段階でのBRG1の役割の解析を行なった。本研究課題の目的は、クロマチンリモデリング因子と初期化因子の関連性を明らかにすることである。初年度の目標は、薬剤誘導による体細胞初期化システムの特徴を調べることであった。本研究の基本となるデータを得るため、いくつかのアッセイ系を確立し、薬剤誘導後の時間経過にしたがって変化する様々な現象について解析した。その結果、多くの遺伝子が体細胞初期化過程で変化するが、BRG1の発現レベルは、初期化過程を通して一定のままであることを明らかにした。現在、タンパク質レベルでの制御機構に焦点を当て解析を行なっている。特に、体細胞初期化過程でBrg1と相互作用する因子を同定し、効率の良いiPS細胞誘導法の確立やクロマチン制御機構の解明につなげたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドキシサイクリンによる誘導後の細胞の形態変化を観察、解析した。初期化因子(Ocf4,Sox2,Klf4,c-Myc)を発現する繊維芽細胞をFACS解析により同定し、それらの性質を調べた。さらに、初期化因子(Oot4、Sox2、Klf4、c-Myc)のタンパク質レベルでの発現量をウェスタンブロッティングで調べた。結果、それぞれのタンパク質の発現量の違いが細胞形態と密接に関連していることを明らかにした。また、体細胞初期化過程におけるBRG1の発現レベルをqPCRによって調べた結果、BRG1の発現レベルは変化しないことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の体細胞初期化システムにおいて、Thy1やSSEA1といった初期化の段階の指標になるマーカーを用いたFACS解析を行い、誘導途中の細胞の性質をより詳細に解析する。またマイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現を調べ、qRT-PCRによって確認する。これまでの結果、繊維芽細胞からiPS細胞になる過程において、Brg1の発現レベルは変化しないことが明らかとなった。ウェスタンブロッティングによって、タンパク質レベルでの解析も行なう。現在、私は、初期化因子とBRG1やBRG1-associated factors(BAFs)との相互作用がBRG1の特異性を制御していると考えている。初期化の各段階でのBRG1との相互作用を明らかにするため、時系列に沿った免疫沈降実験を行なう予定である。
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