2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01505
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 太平 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ADHIKARI Aniruddha 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 外国人特別研究員
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Keywords | 界面 / 非線形分光 / 水 / 振動スペクトル / 振動和周波発生 |
Research Abstract |
凝縮相の基本的分子ダイナミクスの研究では分子レベルでの詳細な知識が得られているが、界面、特に液体界面に代表される"ソフトな界面"に対するわれわれの理解は未だきわめて限られている。本研究はわれわれが独自に開発した新しい界面選択的非線形分光を駆使して、これまで観測できなかった界面分子の静的、動的挙動を解明することを目的としている。Adhikari博士はインドでの大学院博士課程の研究において、フェムト秒時間分解蛍光分光および蛍光相関分光法を用いた複雑系のダイナミクスの研究で多くの成果を上げてきたが、先端的な非線形分光に関する研究の経験はない。また、これまで市販の装置を用いて研究を行ってきたので、われわれの研究室で行っているようなオリジナルな装置を用いた実験を行うためには、まず超短パルスレーザーを用いた分光実験に関する基本的技術を取得する必要があった。そこで平成23年度は、われわれが開発したヘテロダイン検出振動和周波発生(HD-VSFG)分光法を用いた研究をスタートさせながら、基本的技術の習得を行った。このHD-VSFG分光法では、単色性の高い可視光パルスと広帯域の赤外光パルスを液体界面に照射することで生成する振動共鳴和周波信号を、別に参照光として発生させた和周波信号と光の位相を確定しながら干渉させることで二次非線形感受率(χ^<(2)>)の直接測定を実現する。HD-VSFGで得られる二次の感受率の虚部スペクトルは溶液分子の赤外吸収スペクトルと直接比較できるスペクトルである。さらに、このスペクトルで共鳴バンドは符号をもって現れるが、それは界面分子の絶対配向の情報を直接的に含む。このHD-VSFG法を用いて水に電解質を加えていきながら空気/水界面の振動スペクトルを測定し、界面における水素結合が水に電解質が加わることでどのように変化していくかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Adhikari博士は、われわれが独自に開発した先進的な界面選択的非線形分光であるヘテロダイン検出振動和周波発生分光の装置を用いて実際に空気/水界面の振動スペクトル測定を行えるようになった。計画通り、順調に基本的技術の取得が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
独自に開発した先進的な界面選択的非線形分光であるヘテロダイン検出電子和周波発生分光とヘテロダイン検出振動和周波分光を駆使して、ソフトな界面における分子の静的・動的挙動を分子論的立場から解明する。特に、生体膜モデルである、脂質/水界面の研究を推進する。
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