2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11F01710
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
COLLIAUX David 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 神経ネットワーク / 非線形力学系カオス / 適応 / 分岐 / 集団運動 |
Research Abstract |
神経の応答に適応過程を導入して、これによって、発火率変化がどのように影響され、また神経集団の振る舞いに変化が生じるかを調べた。具体的には、膜電位の変化に関して2つの遅い電流の効果を導入して、それらが発火率に与える影響を導入した、非線形のintegrate-and-fire神経モデル(Adaptive Expo、nential Integrate and fire Orstein-Uhlenbeck(AEIOU)モデルを考案して、数値的および力学系の解析によりその効果を調べた、その結果、2つの適応過程のうち、一方が発火の閾値に、他方が発火の応答関数に影響することを見出した。それがコラムの活動に与える影響を平均場の解析によって調べ、特に、遅い発火のオンオフ的な不規則振動をもたらすことを示し、その意義を議論した。これとともに、この神経素子が結合した力学系を調べて力学系の分岐解析も行なった。 また、学習過程での力学系の変化の予備的数値計算をおこなっている。そのほか、博士論文の研究の延長で、視覚野の実験データをもとにした理論モデルの研究を続行している。一方で、金子の方では関連して、速い、遅いという異なる時間スケールを持つ力学系固有の一般的な研究も行った。 これらの研究にあたっては、北大津田教授や理研、そのほかの国内の研究会に参加し、情報を収集し、また研究の方向性、脳科学への意義について議論を重ねた。 研究成果はColliauxがフランスで行われた国際会議Neuro2012でポスター発表し、その一端はproceeding論文として発表している。実験家を含めて多くの参加者と議論した。また沖縄、京都の国内研究会にも参加して、発表、討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以上のように、研究は着実に進展している。ただし、DavidColliauxの興味の幅が多岐にわたっており、多くの方向の模索的研究をおこなっている。これは彼の将来のために必要であるので見守っているが、やや方向が発散気味である。特に1ニューロンの振る舞いの研究とネットワークの研究、更には視覚野の機能的研究への連結が不十分である。研究をもうすこし収斂させて残りの期間で成果をまとめあげていくことも必要であると考えている。同様に、博士論文の継続研究も含めて、まだ完全な論文発表に至っていないものも多いのでそれを進めることも今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形のintegrate-and-fire神経モデル(Adaptive Expo、nential Integrate and fire Orstein-Uhlenbeck(AEIOU)神経モデルの研究をまとめあげて、2つの適応過程の意義をはっきりとさせ、神経科学とのつながりを明らかにする。この結果を早いうちに論文にしあげて投稿し、また国際会議での発表を行う。 ついでこの適応神経を結合させたモデルの分岐解析を行なう。それをふまえて、博士論文で行った、視覚野の理論モデルとの研究に接続し、適応的な神経活動がマクロレベルでどのように達成されるかを明らかにする。一方で、金子側は神経活動の動的可塑性と学習しやすさの関係を調べ、学習可塑性を神経活動ダイナミクスの揺らぎで表現する可能性を調べていく。 国内外の脳研究グループを訪問して議論することも積極的に進め、2年間の結果を広める努力をする。
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