2011 Fiscal Year Annual Research Report
移民と国境をこえる社会空間の形成に関する日本とEUの比較研究
Project/Area Number |
11F01794
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
出雲 雅志 神奈川大学, 経済学部, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOPPER Akos 神奈川大学, 経済学部, 外国人特別研究員
|
Keywords | 移民 / 移動 / 国境 / 外国人労働者 / 国際関係 / 独立国家 / 雇用 / 国民国家 |
Research Abstract |
2011年度(2011年9月-2012年3月)の研究実施計画にもとづく研究成果は、以下のとおりである。 1.移民や外国人労働者問題にかかわる内外の文献と資料を収集するとともに、日本および海外の研究者との交流や意見交換を通じて最新の研究動向を確認しつつ、数編の論文を執筆した。 2.そのなかで明らかにしたとくに重要な点は、国境と移動の意味が歴史的にみて根本的に変化してきたということである。ヨーロッパをみると、17世紀までのキリスト教世界(Corpuschristianum)において国境は、あいまいなままで、むしろあまり必要とされなかったとさえいえる。それに対して、いまの国境は、現代の新しい国家とともに展開されてきた。国境と国家の概念、あるいは国家を基礎とする国際関係は、植民地時代になってから世界に広がっていったのである。そのため、現在の国際関係および移民と国境に関する問題を理解するには、国境と独立国家の系譜についての分析が必要となる。昨年度はとくにこの理論的側面に注目したが、さらに次年度以降も継続してこの研究に取り組みたい。 3.日本の移民や外国人労働者問題だけでなく、日本の高齢化問題に関する研究も開始した。高齢化の問題は、ヨーロッパ社会でも日本と同じように大きな問題であり、移民や移動の比較研究を行ううえで重要となる。とくに着目したのは、移民ないし移動に関するひとびとの不安と政策という問題である。ヨーロッパも日本も移動を支配し限定してきたが、それぞれの支配の仕組みは、ここ20年間で大きく変化してきた。この点の比較検討を次年度以降に継続して行う予定である。 4.2012年2月のイギリスOpen Universityの国際会議において、以上の点についてヨーロッパの研究者と打ち合わせを行い、今後の論文執筆および著作の出版について議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に述べたとおり、「研究の目的」の達成をめざして、研究実施計画にもとづく研究を着実に遂行していると評価するため。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究にもとづき、今後は、移動と安全の問題や移動と雇用の関係、移動の支配といった点にとくに着目して、以下のように研究をすすめる予定である。 1.日本の移民や外国人労働者問題、国境問題に関する資料を収集する。 2.日本およびアジアの外国人集住地において可能なかぎり聞き取り調査を行う。 3.日本およびアジアその他の研究者との意見交換を行う。 4.移動の安全という視点から移民や外国人労働者の問題を検討し分析する。 5.国境の意味の変容と安全概念の変化について検討する。
|