2012 Fiscal Year Annual Research Report
移民と国境をこえる社会空間の形成に関する日本とEUの比較研究
Project/Area Number |
11F01794
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
出雲 雅志 神奈川大学, 経済学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOPPER Akos 神奈川大学, 大学院・経済学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 移民 / 移動 / 国境 / 外国人労働者 / 国際関係 / 島 / シチズンシップ / 国民国家 |
Research Abstract |
2012年度(2012年4月-2013年3月)の研究実施計画にもとづく研究成果は、以下のとおりである。 1.移動や国籍(シチズンシップ)にかかわる内外の文献と資料を収集するとともに、日本および海外の研究者との交流や意見交換を通じて最新の研究動向を確認しつつ、数編の論文を執筆した。 2.この研究の一環として韓国を訪ね、韓国政府の国籍政策に関して数名の韓国人研究者と面談し、意見を交わした。とくに注目すべき点は、韓国ではヨーロッパと同じように「重国籍」を認める方向に政策を転換しようとしているのに対し、日本では依然として「重国籍」を認めようとしない、というきわめて対照的な姿勢を示していることである。韓国のこの「重国籍」へ向けた政策転換の背景には、そのもっとも大きな要因のひとつとして、労働移動と頭脳流出という問題が存在する。この点については、Journal of International Relations and Developmentに受理され、まもなく公刊される論Modern Day Proxeny:Dual Citizens and Resident Foreigners as Citizen Diplomatsで明らかにした。 3.韓国での調査研究で得られたもうひとつの重要な知見は、済州島でのみ、中国人に対してビザなし入国を許可するという政策がとられていることである。これは一般に、移動と交流という点からみて、本国とは異なった「島」がもつ特殊な位置を示唆する。 4.歴史的にみれば、ヨーロッパでもアジアでも、国境と移動の意味は根本的に変化してきた。日本に関しては、長崎の出島や沖縄の歴史に着目することで、「島」からの(への)制限された移動と「島」からの奨励された移民の起源と現状について、2013年度以降も継続して比較研究をすすめたい。 5.発表のために参加した2つの国際会議において、各国の研究者と打ち合わせを行い、今後の論文執筆および著作の出版について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に述べたとおり、「研究の目的」の達成をめざして、研究実施計画にもとづく研究を着実に遂行していると評価できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究にもとづき、今後、移動と移民、移動の制限と自由といった点にとくに着目して、以下のように研究をすすめる予定である。 1.日本の移動や移民、外国人労働者問題、国籍問題に関する資料を収集する。 2.長崎、沖縄、ベトナムにおいて聞き取り調査を行う。 3.日本およびアジアその他の研究者との意見交換を行う。 4.日本およびEUでの移動の制限と自由の歴史、移民政策の変遷について検討し分析する。 5.国境および国籍(シチズンシップ)の意味の変容について日本とEUを比較し考察する。
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