2011 Fiscal Year Annual Research Report
細菌α-ケト酸還元酵素の構造機能相関解析による補酵素要求性の変換とその応用
Project/Area Number |
11J00050
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高瀬 隆一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員DC1
|
Keywords | 酸性多糖 / 還元酵素 / 複酵素要求性 / X線結晶構造解析 / NADH / NADPH / 部位特異的変異 |
Research Abstract |
本研究は、酸性多糖(アルギン酸とペクチン)から生じる各不飽和ウロン酸に作用する細菌由来α-ケト酸還元酵素(Sphingomonas属最近A1株由来A1-RとPectobacterium carotovorum subsp. carotovorum由来KduD)の構造機能相関を明らかにすることを目的とする。両酵素は一次構造上高い相同性を示し、同一反応産物を与えるが、補酵素要求性は異なる。そのため、両酵素の活性中心は類似しており、局所的な差異が補酵素要求性を決定していると予想した。酵素の構造生物学を展開することにより、その反応機構と補酵素(NADPH/NADH)要求性に関わる構造要因を明らかにし、それを用いて補酵素要求性の変換手法を確立する。また、還元酵素における補酵素要求性の相違が、細菌における酸性多糖の代謝に及ぼす生理的意義を解明する。 (1)ペクチン代謝関連酵素KduDの構造と機能 上記植物軟腐性細菌からKduDの遺伝子をクローニングし、大腸菌を用いてKduDの大量発現系と精製系を構築した。KduDは、補酵素としてNADHを優先的に利用し、NADPHに対しても十分な活性を示した(NADH,K_<cat>/K_m=93[mM^<-1>s^<-1>]; NADPH,k_<cat>/Km=34[mM^<-1>s^<-1>])。蒸気拡散平衡法により立方体状のKduD結晶を取得し、X線結晶構造解析により、分解能1.55Aで立体構造を決定した。これは、KduDの最初の構造決定例である。KduDはA1-Rと同様の立体構造を有しており、触媒三残基(Ser、Tyr、Lys)が保存されていた。 (2)アルギン酸代謝関連酵素A1-Rの補酵素要求性変換 既に明らかにしたA1-R/NADP^+複合体の立体構造及び部位特異的変異体の活性変化などから、Arg-39が補酵素(NADPH)要求性に深く関わっていることを見出している。Arg-39を中心に、NADPHのリン酸基との結合を阻害する立体障壁(芳香族や分岐鎖アミノ酸)と静電効果(負電荷アミノ酸)を部位特異的変異によりA1-Rに導入した。その結果、補酵素要求性の変換に加えて、NADHに対する活性においても野生型酵素(WT)の活性を上回る変異体を取得した(R39LやK40D)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は、KduDの立体構造を決定し、部位特異的変異体解析によりA1-Rの補酵素認識に関わるアミノ酸残基を明らかにすることであったが、これらを全て達成することができた。それらに加え、KduDについては部位特異的変異体解析により触媒残基の同定を行い、A1-Rについては補酵素要求性の変換のみならず野生型,(WT)のNADE利用能を上回る変異体を得ることができた。そのため、当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
KduDが、両補酵素(NADPH/NADH)を利用することができる構造要因を明らかにするため、KduD/NADPHとKduD/NADH複合体の結晶構造を決定し、補酵素との相互作用様式を明らかにする。A1-Rに関しては、得られたNADH型変異体のNADHに対する活性が、WTのNADPHに対する活性には及ばない。今後は、変異体のNADHに対する活性をWTのNADPHに対する活性に近づけるため、単発の変異に加えて、多重変異導入を行う。
|