2012 Fiscal Year Annual Research Report
細菌α-ケト酸還元酵素の構造機能相関解析による補酵素要求性の変換とその応用
Project/Area Number |
11J00050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高瀬 隆一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 酸性多糖 / 還元酵素 / 補酵素要求性 / X線結晶構造解析 / NADH / NADPH / 部位特異的変異 |
Research Abstract |
〈背景と目的〉 本研究では、酸性多糖(アルギン酸とペクチン)から生じる各不飽和ウロン酸(α-ケト酸)を、異なる補酵素を用いて還元する細菌由来α-ケト酸還元酵素(A1-R,KduD,CA-R)の構造機能相関を解析することにより、補酵素要求性を決定する構造要因を明らかにすることを目的とする。また、還元酵素における補酵素要求性の相違が、細菌における酸性多糖の代謝に及ぼす生理的意義を解明する。 (1)海洋細菌Croceibactor atlanticus由来α-ケト酸還元酵素CA-Rの同定と機能 A1-Rの構造的特性からNADH利用能が示唆されるα-ケト酸還元酵素をKEGGゲノムデータベース(http://www.genome.jp/kegg/)より探索した。データベースの中から、海洋細菌C. atlanticus5ゲノムにアルギン酸代謝に関わると予想される遺伝子クラスターを発見した。本クラスターに含まれるA1-RホモログはA1-Rと高い相同性を示し(35%)、一次構造上の特徴からNADH型のα-ケト酸還元酵素であると推定し、本酵素をCA-Rとした。大腸菌を用いたCA-Rの大量発現系を構築し、CA-Rの酵素学的特性を決定した。CA-RはNADH存在下でα-ケト酸還元酵素活性を示した。A1-RとCA-Rを比較すると、その特性は類似していたが、A1-RがNADPHに特異性を示すのに対し、CA-RはNADHをよい補酵素とした。 (2)アルギン酸代謝に関わるα-ケト酸還元酵素A1-Rの補酵素要求性変換 CA-Rの一次構造を参考にしたA1-R変異体を作製した。A1-Rのアルギニン39をロイシンに、リジン40をアスパラギン酸に同時に置換した多重変異体A1-R_R39LK40Dを作製し、その酵素学的特性を決定した。A1-R_R39LK40DのNADHに対するk_<cat>値とK_m値はそれぞれ62.6[s^<-1>]と0.57mMであり、NADPHに対しては4.0[s^<-1>]と0.53mMであった。A1-Rの補酵素依存性をNADH型に変換できた。しかし、変異体のNADHに対する親和性は野生型のNADPHに対する親和性(K_m=0.009mM)の1/60程度であった。 (3)α-ケト酸還元酵素A1-Rの基質結合様式 A1-Rによるα-ケト酸の認識機構を解明するため、A1-R_Y164F変異体/α-ケト酸/NADP+複合体の結晶を調製し、X線結晶構造解析により分解能1.80Åで複合体構造を決定した。α-ケト酸のアルデヒド基の周囲には触媒反応に関わる三残基(触媒三残基)が位置していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は、A1-RとKduDについて、補酵素/基質との複合体構造を決定すること、及び部位特異的変異体解析により各アミノ酸の役割を明らかにすることであった。A1-Rは複合体構造を決定し、α-ケト酸分子が触媒三残基近傍に位置することを明らかにした。これより、これら三残基が触媒反応に関与していることを立体構造上から確認することができた。KduD複合体は良質な結晶を取得することに努めている。また、NADHをよい補酵素とするα-ケト酸還元酵素CA-Rを新たに見出し、その酵素学的特性を決定した。CA-Rの一次構造を参考に作製したA1-R変異体A1-R_R39LK40Dは、k_<cat>/K_mの観点から補酵素依存性がNADH型に変換されていた。変異体のNADHに対する親和性は野生型のNADPHに対する値の1/60程度であったので、更なる改良を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
補酵素要求性に関わる構造要因を追究するため、KduDの補酵素や基質との複合体構造解析を進める。A1-Rについては、NADHに対する親和性も野生型のNADPHに対する親和性に匹敵する変異体の作製を試みる。また、得られたα-ケト酸還元酵素変異体をその生産細菌において野生型酵素と置き換え、アルギン酸やペクチンの代謝能を評価することにより、α-ケト酸還元酵素の補酵素要求性の違いが及ぼす生理的意義について明らかにする。
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