2011 Fiscal Year Annual Research Report
STEM-EELS法を用いた遷移金属酸化物の高空間分解能電子状態解析
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11J00051
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
治田 充貴 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 走査型透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光法 / 遷移金属酸化物 / 局所電子構造 |
Research Abstract |
強相関電子系材料ではスピン、電荷、軌道がそれぞれ強い相関を受けており、置換元素の僅かな違いや、薄膜化、また界面や欠陥において多彩な物性を示す。これら物性を支配している電子状態の変化を原子レベルで追うためには、走査型透過電子顕微鏡(STEM)と電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いた高い空間分解能での実験的な局所電子構造解析法が有効であり、解析手法の確立が求められる。また第一原理計算を併用することで、原子分解能での原子・電子構造分析法の確立、遷移金属酸化物の物性と局所原子・電子構造との関係を明らかにすることを目的とし、電子状態の高空間分解能マッピングに向けた実験的研究を行う。本年度は、以下の研究を実施した。 ・球面収差補正器を装備したSTEM-EELS装置の性能評価。 NIMSでは平成22年12月に最先端電子顕微鏡を導入したため、既知試料を用いた実験的研究によりこれまでの電子顕微鏡との比較やミリスペクトルの空間分解能や成分の定量性また実験的取得法について精査し、性能評価を行った。 ・これまでSTEMやEELSを用いて原子像や元素像が観察することが可能であったが、次のステップとして同一元素の電子状態の違いを原子分解能で識別した2次元像を取得することに成功した。特に本研究では酸素原子の内殻K殻励起スペクトルに着目し、遷移金属酸化物中の配位元素として存在する酸素原子の電子状態の違い(特に陽イオンとの電子軌道の混成の違いや、ヤーン・テラー歪に由来する遷移金属d軌道における電子ホールの空間的な異方性)を識別した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災による装置トラブル。現在は復旧済み
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶試料を用いた更なる電子状態マッピングの応用研究と、第一原理計算を用いたその解釈を進めることにより、局所電子状態マッピングの解析技術を確立し、計算での予測が難しい非周期な系(界面や欠陥)において局所電子情報を性格に抽出する。
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