2011 Fiscal Year Annual Research Report
亀井文夫監督作品におけるドキュメンタリーとリアリズム
Project/Area Number |
11J00117
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
フィオードロワ アナスタシア 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(D1)
|
Keywords | 亀井文夫 / ドキュメンタリー / リアリズム / 紀行映画 / 日露文化交流史 |
Research Abstract |
申請者の研究目的は、ドキュメンタリー映画の中に演出された再現シーンを盛り込み、劇映画には逆に記録映像の挿入を行った革新的な映画作家である亀井文夫の芸術的特性をあらわにし、これまで実現されてこなかった亀井の包括的な作家論を確立することである。亀井作品の特性や、亀井のドキュメンタリーやリアリズムに関する批評が、日本や世界の映画史に及ぼした影響を明らかにすることも一つの目的とする。上記の研究目的を達成するため、申請者は日本で芽生えた多種多様なリアリズム論やドキュメンタリー映画論が外国のそれとどのように異なってきたかを検討する。そのような比較研究を行うため、今年は早稲田大学の演劇博物館やアメリカ、ニュー・ヨークのコロンビア大学、そしてロシア、モスクワの諸アーカイヴでの調査を実施した。RGAKFD(ドキュメンタリー映像・写真専門ロシア国立アーカイヴ)では、亀井文夫がレニングラードに留学し、映画を勉強していた時代のソビエト・ドキュメンタリー界をリードしていた、Vladimir ErofeevやVladimir Shneiderov監督の全作品を拝見し、亀井に特徴的な紀行映画への執着や、ロング・テイクをも取り入れたモンタージュ技法は、特にErofeevの作風と共通する点を多く有することを証明することができた。この研究の成果は、査読制電子映画学術誌CineMagaziNet! (http://www.cmn.hs.h.kyoto-u.ac.jp)、No.15に「「旅する」叙情詩人-亀井文夫の紀行映画における自己言及性をめぐって」という題名の論文として掲載された。この論文の内容は、今後亀井文夫や紀行映画、リアリズム、ドキュメンタリー、そして日露の文化交流といったテーマに関心を持つ研究者にとって役立つであろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り国内・国外のアーカイヴにアクセスでき、博士論文の執筆に必要な資料を収集できている。一年に計5つの国際学会で異なる言語で発表を行い、自らの研究成果を世界に発信できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年一年を通しての研究は、国内・国外のアーカイヴでの一時資料の調査を中心に行ってきたが、これからは博士論文の執筆にかかせない二次資料・先行研究に目を傾け、自らの発見とそれらの内容を比較しながら、研究を進めたい。リアリズムやドキュメンタリーといった概念がこれまで、映画学という分野で、どのような意味合いで使用されてきたのかを調査し、そこから得られた知識を、戦後日本の映画作家が抱いていたリアリズム観及びドキュメンタリー観を分析する際に応用する。
|
Research Products
(9 results)