2011 Fiscal Year Annual Research Report
数論幾何学に於ける非可換代数的手法の研究及び非可換岩澤理論への応用
Project/Area Number |
11J00200
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 隆 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非可換岩澤理論 / CM体の岩澤理論 / 非可換Fitting不変量 |
Research Abstract |
本年度はユニタリ群上の保型形式の理論の岩澤主予想への応用についてChristopher Skinner,Eric Urbanの結果(楕円保型形式の岩澤主予想への応用)並びに謝銘倫の結果(CM代数体の岩澤主予想への応用)を中心に研究を行った。彼らの手法は革新的であり現在の岩澤理論の発展には欠かせないものであると考えられているが、まだ手法が正式に発表されてからの歴史が浅いため、その細部を検証し論理的な飛躍や簡略化できる部分を模索することは今後の岩澤理論研究のさらなる進展に於いて欠くことの出来ない重要な作業である。さらには総実代数体以外のモチーフに対する非可換岩澤主予想へのアプローチとしても本手法は大いに役立つと期待されるため、本年度実施した作業は自身の研究の進展のためにも極めて重要なものであると考える。 また、今年度はCM体の岩澤主予想とCMヒルベルト保型形式の変形族(肥田族)の岩澤主予想の関係性についての研究に着手した(落合理氏との共同研究)。本研究は"CM体の多変数非可換岩澤主予想"並びに"保型形式の非可換変形の岩澤理論"といった、現時点では知られていない現象を観察する際の重要な手がかりになるものと期待している。本年度の研究では、CM体に付随する岩澤加群が非自明な擬零部分加群を持たないという、恐らく広く知られていた(或いは信じられてきた)性質に対し精密な証明を与えることに成功した。非自明な擬零部分加群の非存在性は、岩澤降下の議論の際に核心的に重要な役割を演ずるにも拘わらずあまり重視されてこなかった性質であり、今回そのような基本的な性質を改めて確立したことは非常に意義深いことである。 本年度はさらに、近年Andreas Nickelによって目覚ましい進展を遂げている非可換Fitting不変量についても研究を行った。この方面では現在Nickelの理論を用いて栗原将人,Cornelius Greither等のSticlelberger idealの理論の非可換岩澤理論への応用を模索しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は基礎研究を重視して研究活動を行ったため、研究成果の面では劇的に進展したとは言い難い。しかし当初から(交付申請書にも記載の通り)初年度は基礎研究を重点的に行う予定になっていたし、「9.研究実績の概要」でも触れたように今年度の基礎研究は今後の研究のために極めて重要なものであり、既に幾つかの場面で今年度の研究を応用できそうな手ごたえが得られているので、今年度の研究の方向性に重大な問題があったとは全く考えていない。唯、基礎研究と自身の研究課題の研究をより効率的に同時進行させる余地はまだまだ残されているとは思うので、その点は反省して来年度以降の研究の進め方に活かしたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
CM体の岩澤理論に関して本年度行ってきた諸研究を踏まえ、次年度以降はCM体の非可換岩澤主予想やCM保型形式の非可換変形の岩澤主予想について、その定式化の在り方も含めて本格的な研究に乗り出す予定である。総実代数体の非可換岩澤理論とCM体の非可換岩澤理論に於ける大きな違いの一つに周期の取り扱いがあり、極めて慎重な扱いを要する問題であると考えられる。この問題については、現在進行中の落合理氏との共同研究の成果が還元できるのではないかと期待している。 また、Stickelberger idealの理論、オイラー系の理論等古典的な岩澤理論に於いて重要な役割を演じたにも拘らずその非可換版がいまだに整備されていない事柄についても同時進行的に検証を深めていきたい。
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