2012 Fiscal Year Annual Research Report
数論幾何学に於ける非可換代数的手法の研究及び非可換岩澤理論への応用
Project/Area Number |
11J00200
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 隆 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | CM体の岩澤主予想 / 虚数乗法を持つヒルベルト保型形式 / ヒルベルト保型形式の岩澤主予想 / 擬零部分加群 / Culler-Shalen理論 / 本質的分岐曲面 / 数論的位相幾何学 / Bruhat-Titsの<建物> |
Research Abstract |
本年度は2d次CM体のd+1変数岩澤主予想を適切に特殊化することにより,(若干の技術的仮定の下で)虚数乗法を持つ(p概通常な)ヒルベルト尖点形式に対する円分岩澤主予想が導かれることを証明した.これは大阪大学の落合理氏との共同研究による成果であり,虚二次体の二変数岩澤主予想の特殊化に関するKarl Rubin,加藤和也等の古典的な結果の一般化に相当する.特に岩澤加群の特性イデアルが特殊化と整合的でないため,岩澤加群が非自明な部分擬零加群を持たないことを証明する必要があることはRubin等の議論でも論じられていたが,我々の一般化ではd変数分特殊化する必要があったため,単に岩澤加群が非自明な部分擬零加群を持たないことを示すだけでは不十分であった.したがってRalph Greenbergの判定法を繰り返し適用し,岩澤加群を非自明な部分擬零加群が生じないように段階的に上手く特殊化する方針を採った点が技術的な側面での核心である. また,本年度は3次元多様体に含まれる本質的曲面を組織的に構成するための古典理論であるCuller-Shalen理論を,Bruhat-Titsの<建物>の理論を用いることで基本群の高次元表現の指標多様体上の理論へと拡張し,3次元多様体に含まれる或る種の分岐曲面を系統的に構成する手法を構築した.これは東京大学の北山貴裕氏との共同研究による成果である.本研究は非ハーケン多様体の研究への応用など低次元トポロジーに於ける応用も当然期待できる一方,Barry Mazur,森下昌紀らに依る数論的位相幾何学の観点から,数論的な応用も十分に期待できるものであると言える. なお,上記の2件の研究成果については現在論文を準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度から進行中であった落合理氏との虚数乗法を持つヒルベルト保型形式に対する岩澤主予想に関する共同研究が『特殊化による円分岩澤主予想の導出』という研究着手時から掲げてきた中間目標地点に到達し,論文執筆という段階に入ることができたことから,岩澤理論に関する研究は順調に進展していると言えよう.また北山貴裕氏とのCuller-Shalen理論に関する共同研究は計画外の収穫であった.本研究はトポロジー分野への貢献は勿論,数論幾何学への位相幾何学的観点からの新たな手法の導入という形で還元されることも期待されるため,本年度の研究成果は総じて来年度の研究へ繋がる大変実り豊かなものであったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
落合理氏との共同研究を最終目標である『CM体の岩澤主予想と虚数乗法を持つヒルベルト尖点形式のp概通常変形の岩澤主予想の比較』まで到達させることに先ず力を注ぎたい.本研究が完成した際には,ヒルベルト尖点形式のp概通常変形に付随するp進L関数間の非可換合同式(振れ合同式,メービウスーウォールの合同式)の適切な定式化の仕方や証明の方針が浮き彫りになり,本研究課題の目標の一つである多変数非可換岩澤理論を考察するうえでの足掛かりとなることが期待されるためである. また北山貴裕氏との共同研究の成果は,森下昌紀等の数論的位相幾何学の観点からは保型形式のp進族のなすリジッド解析的曲線の幾何学につながるものになると考えられる.保型形式のp進族の幾何学的性質は岩澤理論にも応用があるものの,まだまだ解明されていないことも多い.その分野に新たな視点を導入できる可能性を北山氏との共同研究の成果は秘めていると考えられるため,こちらも継続して研究を進行させていく予定である.
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