2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00229
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠岡 誠一郎 京都大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 確率解析 / 確率微分方程式 / マリアヴァン解析 / ランダム環境 / シュタインの方法 / ランキングプロセス / スペクトル解析 / マルコフ半群 |
Research Abstract |
今年度はランダム環境の下での拡散過程の挙動に関係するいくつかの独立した研究を行った。 最初にシュタインの方法についての研究について説明する。ここで述べるシュタインの方法とはNourdinとPecattiにより与えられた解析の手法で、シュタイン方程式とマリアヴァン解析を用いることにより、あり確率変数の分布の間の距離が評価できるというものである。この研究ではこれまでに知られている場合をすべて含む一般的な枠組みに既存の理論を拡張し、様々な分布との間の距離の評価を得た。この研究成果は雑誌への掲載が決まった。 次にランキングプロセスについての研究について説明する。ランキングプロセスとは服部哲弥氏により作られた、現実社会で使われている順位付けを数学的に定式化したものである。この研究では既存の結果が成り立つようなモデルの拡張をできる限り行った。特に、1位に飛ぶ時間が従う指数分布の指数が時間だけでなく位置にも依存した場合への拡張がこの研究の主な結果である。この結果は論文として投稿中である。 次にマルコフ半群の定常分布への収束の速さについての研究について説明する。あるマルコフ半群がエルゴート的であるとき、この半群は空間に依存した速さで定常分布に収束する。この研究ではP乗可積分な関数空間での収束の速さのp間で成り立つ関係を求め、速さが空間の指数pに依存しないための十分条件を求め、更に収束の速さが空間の指数に依存する例を作ることにも成功した。この研究成果は現在論文として纏めている。 最後にランダム環境の下でのブラウン運動の再帰性に関する研究について説明する。この研究ではガウス場の下でのブラウン運動が再帰性になるための十分条件を平均と共分散を使った具体的な形で与えることに成功した。また、この研究ではレヴィ過程から作られるランダム環境に対しても議論を行った。この研究成果も現在論文として纏めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる研究である「ランダム環境の下での拡散過程の挙動」の研究は計画通りに進んでいる。一方で、主たる研究を進める上で役立つと思われる、主たる研究に関連する研究は当初の計画以上の成果を上げている。これらのことを総合して現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、現在纏めの作業中である、マルコフ半群の定常分布への収束の速さについての成果とランダム環境の下でのブラウン運動の再帰性に関する成果を投稿できる論文の形で纏める。そして、本研究の目標である、複雑な空間での拡散過程の挙動について研究を進める。また研究を進めるに当たり、特定の事象についてだけ固執するのではなく様々な理論や手法に目を向け、幅広い研究を目指す。
|