2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安井 大輔 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 食 / エスニシティ / 文化 / 接触領域 / 沖縄 / 在日韓国・朝鮮人 / ブラジル / 南米 |
Research Abstract |
筆者の研究は、多文化時代における食文化の変容と生成に、比較社会学的視点からアプローチし独創的な研究領域を切りひらこうとするものである。従来、自らの文化的民族的アイデンティティを表出する資源としてみなされてきた「食」が、グローバル化の進展とともに多文化化しハイブリッド化していくなかで、どのようにその位置を変化させてきたのかは、現代世界の社会・文化研究にとってもきわめて有意義なものである。とりわけ筆者は、沖縄や本土から南米に移住した「日系人」が日本に再移住して、沖縄や朝鮮半島からの移住者などと接触しながら、マジョリティ社会のなかで、つくりあげる食文化を長期のフィールド調査によって分析している。 具体的な調査フィールドは横浜市鶴見区の臨海地域である。戦前から沖縄からの本土移民および在日韓国・朝鮮人の集住地であった当地は、1990年の出入国管理法の改正以降、ブラジル・ボリビア・ペルー等から沖縄出身日系人の二世、三世たちが多数移住するようになった経緯を持つ。そして現在は、沖縄と韓国と南米の両文化が混交する文化接触領域Contact Zoneとなっている。筆者の研究目的は、ホスト性とゲスト性が幾重にも錯綜した現代世界の縮図でもあるこのような場を通して、どのように文化の再創造と再整理がおこなわれているのかを探求し、多文化化する現代世界の新たな文化秩序の解明と展望に寄与することである。 このようなさまざまな属性を持つ人々の共存する都市における文化やエスニシティを研究するには、他者と差異化し同一性を確認する装置として働く"エスニックフード"の維持・変容という食文化からの視点が不可欠であると考えている。この認識にもとづき、今年度は上記の文化接触領域におけるレストランや家庭食・行事食の調査を行い、食によるエスニック集団の表象と地域内外における人々の食実践のあり方について研究を進め学会での発表と論文の執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
人の移動に伴う文化変容をとらえるには、元々の母文化と移住先で形成される新しい文化とを比較する必要がある。こうした比較のためには国境をまたいだ横断的な調査が欠かせない。さいわいにも今年度は、自身の研究成果を、韓国やオーストラリアの文化研究セミナーで報告したり、日本の他大学の研究チームと共同したりと、内向きにならずつねに開放的な研究ネットワークを構築して、研究成果を鍛えることができた。その意味で、当初の期待以上の進展があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査で得られた結果を国内や海外の学会で発表する機会に恵まれ有益なコメントを受けることができた。今後はさらにデータの分析と考察を深めたうえで、論文にまとめ社会学の学術雑誌『ソシオロジ』や『社会学評論』に投稿し、広く研究成果を世に公開していく予定である。
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Research Products
(7 results)