2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体触媒による不斉四置換炭素の立体選択的構築
Project/Area Number |
11J00257
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 桃太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 触媒的不斉合成 / 銅 / NHC / ホウ素反応剤 / アリル位置換反応 / アリルシラン |
Research Abstract |
21世紀における元素戦略において、21世紀における元素戦略に鑑みた化学の発展には、入手容易で豊富な資源を用いて穏和な条件下で行われる、汎用性の高い有機化学反応の開発が求められている。とりわけ、光学活性な分子を自由に作り・分ける触媒的不斉合成については、医農薬分野への貢献が大きい。 銅触媒による触媒的不斉アリル位置換反応は、光学活性なアリル化合物を効率よく合成することのできる有用な手法であり、有機ホウ素反応剤を含む種々の有機金属反応剤が用いられてきた。一方で、ケイ素求核剤を用いて炭素―ケイ素結含を形成するアリル位置換反応は、その生成物がアリルシランとなり有用性も期待される。これまでに銅触媒を用いたこの形式の反応は数例知られているものの、不斉反応への展開はごく最近まで報告例がなかった、前年度の研究成果である、銅触媒によろ有機ボロン酸エステルを用いたリン酸アリル類の不斉アリル位置換反応の知見を活かし、シリルボロン酸エステルを用いたリン酸アリル類の不斉アリル位置換反応に取り組み,その結果、光学活性なアリルシランが効率よく得られることを見出した。 本反応では、用いる塩基の強さが極めて車要であり、位置およびエナンチオ選択性に大きな影響を与えることがわかった,比較的弱い塩基であるNaOHを用いることによって、γ置換体が高位置およびエナンチオ選択的に得られた。 さらに、γ位二置換のリン酸アリルを用いることによって、ケイ素のα位に不斉四置換炭素を持つ光学活性なアリルシランを高エナンチオ選択的に合成することも可能である、 本触媒反応で得られた光学活性なアリルシランは、立体選択的な有機合成の反応剤として用いることができる。Lewis酸存在下、アルデヒドと反応させることによって、不斉転写を伴って光学活性なホモアリルアルコールが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの銅触媒による有機ボロン酸エステルを用いた不斉アリル位置換反応の開発に関する研究で得られた知見を活かして、シリルボロン酸エステルを用いた不斉アリル位置換反応を開発した。研究の中で、新たな不斉四置換炭素の構築法の開発にも成功している。これらの研究成果は日本化学会第93春季年会にて口頭発表している。また、論文としては、本報告書作成時点において国際学会誌へ投稿中である。以上のことにより、期待通りの研究の進展が見られたものとして評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した銅触媒による不斉アリル位置換反応の機構に関する研究を中心に行う。各反応中間体をNMRによる当量反応実験によって捕捉・同定するとともに、鍵化合物の単離およびエックス線結晶構造解析も行い、触媒サイクルに関する試験を集める。これらの知見および前年度までの成果に基づいて、新たな反応開発の端緒とし、さまざまな高効率反応実現を目指す。
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